活魚を加圧して死後硬直を遅延させる技術
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吉岡@晩学生 | 2001.03.14 | 最近、テラピアのことが盛んに出ていますが農芸化学会誌2月号にでていた記事を一つ、 「活魚の加圧処理による死後硬直の遅延化と肉質の変化」について、鹿児島大学水産学部の御木らの研究によると、養殖テラピアを生きたまま加圧処理(3気圧)、1時間加圧後に延髄刺殺をすると死後硬直が遅くなるということがわかっていたが、さらに研究を重ねた結果、大気圧に戻す処理を緩慢にすることによって死後硬直を約5倍に遅延させることに成功したとのこと。 ここで死後硬直が遅くなると流通にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。 動物の肉の死後硬直と同様な解釈でいいのでしょか。 その辺を教えてください。 |
琵琶湖オオナマズ | 2001.03.14 | 活魚料理やさんとか、お寿司やさんとかにとって、ロス率が下がることになるでしょうし、いいですね。 しかし、そうした処理をするための設備投資等々で、魚の値段が上がったら、結果的には同じ事かもしれません。(^_^;) それに、チカダイ(テラピア)でできても、マダイではどうか、はまちではどうか・・・というような関門が、まだあるような気がします。 別の角度から考えてみると・・・・・ 現在、荷受会社の活魚担当の方は、真夜中に出勤され、活魚の〆を行っておられます。 死後硬直が遅くなれば、真夜中に出勤しなくてもいいようになるかもしれませんね。 これは、働く人にとっては 、絶対、いいことですよ。 |
奈良近ハンブル | 2001.03.14 | この4月の水産学会でも発表されますよね。 4月3日の後半に。(その前の2つはうちの研究室です。こちらもよろしくね。) > ここで死後硬直が遅くなると流通にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。 > 動物の肉の死後硬直と同様な解釈でいいのでしょか。 これは結構面白いです。 これ実はウナギが主役らしいのです。 ウナギを〆て調理する時に〆た直後にすぐ火を通せばふっくらと焼きあがるのに,〆てしばらく置いて火を通すとどうもふっくらしないらしいです(このへんはよくわかりません)。 1,2匹ならいいけど,大量に処理する場合は困るらしいです。で,どうにかしたいな,と。 そこで死後硬直を遅らせるには・・・。 死後硬直にはATPというものが関与し時間とともに減少,これが無くなると完全硬直します。 このATP,酸素が供給されればいくらでも再構築,再利用されます(生きている時がこれですね)。 これをふまえて。 生きたまま水中で加圧すると魚筋肉中の溶存酸素量が増えるそうです。 で,この場合,〆て心臓が止まり酸素の供給が無くなっても、通常と比べ酸素の減る速さは同じでも筋肉中の酸素残存量は多いですよね。もともと多いから。 ということはATPもより長く再構築,再利用されうるわけです。ならば死後硬直も遅くなると。 〆た後品質が低下するまで時間が充分あるならば,2人のところを1人でできるとか。 実は私も又聞きです。ちょっと面白くないですか? 4年前は魚の死後硬直の進行具合を一晩中計っていました。 |
吉岡@晩学生 | 2001.03.14 | >そこで死後硬直を遅らせるには・・・。 >死後硬直にはATPというものが関与し時間とともに減少,これが無くなると完全硬直します。 >このATP,酸素が供給されればいくらでも再構築,再利用されます(生きている時がこれですね)。 なんかの推理小説で死後硬直を遅らせることでアリバイを作るというのがありましたっけ? >これをふまえて。生きたまま水中で加圧すると、魚筋肉中の溶存酸素量が増えるそうです。 なんか昔、結核の治療で用いられた「鉄の肺」みたいですね。 >で,この場合,〆て心臓が止まり酸素の供給が無くなっても通常と比べ酸素の減る速 >さは同じでも筋肉中の酸素残存量は多いですよね。もともと多いから。 >ということはATPもより長く再構築,再利用されうるわけです。ならば死後硬直も遅くなると。 >〆た後品質が低下するまで時間が充分あるならば,2人のところを1人でできるとか >実は私も又聞きです。ちょっと面白くないですか? いえ、大変興味あります。なんか、酸素によるドーピングみたいですね。 |
吉岡@晩学生 | 2001.03.15 | >ウナギを〆て調理する時に〆た直後にすぐ火を通せばふっくらと焼きあがるのに,〆 >てしばらく置いて火を通すとどうもふっくらしないらしいです(このへんはよくわかりません)。 イメージ的にはわかるような気がします。 >死後硬直にはATPというものが関与し時間とともに減少,これが無くなると完全硬直します。 ATPがリン酸とADPになっちゃうんですよね。 >生きたまま水中で加圧すると魚筋肉中の溶存酸素量が増えるそうです。 なんかドーピングみたいですね。 >酸素の減る速さは同じでも筋肉中の酸素残存量は多いですよね。もともと多いから。 >ということはATPもより長く再構築,再利用されうるわけです。ならば死後硬直も遅くなると。 そうなんですか、でもその筋肉のキャパシティーがありますよね。 >〆た後品質が低下するまで時間が充分あるならば,2人のところを1人でできるとか。 このあたりが大事かもしれませんね。 >4年前は魚の死後硬直の進行具合を一晩中計っていました。 手を下して実験した人にはかないませんよ。 オオナマズさんからもメリットがあるとのこと そのうち「高圧処理ウナギ」「高圧処理****」が出回るかもしれませんね。 |
塩崎@東北大水産化学 | 2001.03.15 | > 生きたまま水中で加圧すると魚筋肉中の溶存酸素量が増えるそうです。 > で,この場合,〆て心臓が止まり酸素の供給が無くなっても通常と比べ酸素の減る速 > さは同じでも筋肉中の酸素残存量は多いですよね。もともと多いから。 > ということはATPもより長く再構築,再利用されうるわけです。ならば死後硬直も遅くなると。 なるほどなるほど。 酸素に着目しているところが面白いですね。 あとは食品的価値として、味や肉色が問題なければ実用化されそうですね。 筋肉が酸化され肉色に影響はないのかな?学会でも楽しみに聞いてこようっと。 > 4年前は魚の死後硬直の進行具合を一晩中計っていました。 私も同じ実験を4年ほど前に学生実験で一晩中やってました。 ただこっそり缶ビール片手にですが。けっこう滅入ってきますよね。 |
heita@沖縄 | 2001.03.15 | > >死後硬直にはATPというものが関与し時間とともに減少,これが無くなると完全硬直します。 > ATPがリン酸とADPになっちゃうんですよね。 その昔に勉強したんですが、現場にいるとどんどん忘れてしまう・・・。 先ず、商品としての魚の価値は当然「鮮度」で決まります。その鮮度とは何でしょう? 魚の場合は、死後1〜数時間で死後硬直が始まり、2〜22時間後には再び柔らかくなり(解硬)、そのご自己消化が起こり更に筋肉が軟化します。 このころから細菌の増殖が始まり、鮮度低下さらには腐敗します。 鮮度の維持とは、死後硬直を長引かせる戦いだと言っても良いと思います。 ATP:アデノシン三リン酸は、アデノシン一リン酸、イノシン酸、イノシン、ハイポキサンチンへと順次分解されます。 このATPの分解過程を数値で表したのがK値です。K値が低いほど鮮度が高いことになります。 問題なのは、旨味成分の生成が鮮度と比例しないことですね。 アデノシンとイノシンの比率等、つまりある程度のATPの分解が進まないと、旨味がでないことになります。 > >ちょっと面白くないですか? > いや、大変参考になります。 本当ですね。とても楽しみです。 後は、塩崎さんが書かれているように、デメリットの検証ですね。 生物科学上の成果と商品価値では大部ニュアンスが異なりますからね |
奈良近ハンブル | 2001.03.16 | > 私も同じ実験を4年ほど前に学生実験で一晩中やってました。 > ただこっそり缶ビール片手にですが。けっこう滅入ってきますよね。 同じようなことしてる人やっぱり居たんだ。 ものすごさみしいんですよね,真夜中なんか。低温室寒いですし。 うちの学校幽霊でますし(私は霊感ナシ)。 私の場合は6時間おきに死後硬直(改良Cutting法でしたっけ?),ATP量,破断強度(肉の硬さ),顕微鏡写真とかやってました。 お酒は飲んでませんでした。サンプリングの時間に起きれなくなりますから。なんか懐かしなってきました。 でも、もうあの実験は勘弁してほしい |
奈良近ハンブル | 2001.03.16 | > 先ず、商品としての魚の価値は当然「鮮度」で決まります。その鮮度とは何でしょう? > 魚の場合は、死後1〜数時間で死後硬直が始まり、2〜22時間後に > は再び柔らかくなり(解硬)、そのご自己消化が起こり更に筋肉が軟化します。 > このころから細菌の増殖が始まり、鮮度低下さらには腐敗します。 いついつまでの状態が鮮魚で,その後のどこまでが活魚であるといった区別もしてあったと思います。 蛇足です。 時々,死後硬直しているから肉質が硬くなっている,と言われる方がおられますが(私の親父がそうでした),死後硬直と肉質の硬さは直接には関係ありません。 肉質は〆た時点で一番硬く,その後はそれ以上硬くなることはなく、徐々に軟化していきます。 これは一般に言われる歯ざわりですね,筋肉内のコラーゲンが大きく関与しているといわれています。 死後硬直はheitaさんが上記に書かれたとおり,柔軟性のあった魚体が一端硬直し,その後また柔らかくなります。 魚体の骨を中心に左右の筋肉が収縮し合うことによりおこる緊張した状態です。 フィレーにしてしまうと死後硬直は起こらないと思います。 > ATP:アデノシン三リン酸は、アデノシン一リン酸、イノシン酸、イノシン、 > ハイポキサンチンへと順次分解されます。このATPの分解過程を数値で表した > のがK値です。K値が低いほど鮮度が高いことになります。 これら物質の総量に対するイノシンとヒポキサンチン(私らはドイツ語読み)量の割合ですね。 > 問題なのは、旨味成分の生成が鮮度と比例しないことですね。アデノシンと > イノシンの比率等、つまりある程度のATPの分解が進まないと旨味がでないことになります。 これはしょうがないですよね,硬さ(歯ざわり)をとるか旨みをとるか。 私達は「魚食(特に生食)にとって食感は大事であるから・・云々」という書きまわしをよくします。 ベタな言い方ですが,やっぱり食べる人の好みや,その魚種によって違いが生じるものと思います。 > 後は、塩崎さんが書かれているように、デメリットの検証ですね。 > 生物科学上の成果と商品価値では大部ニュアンスが異なりますからね。 社会への貢献度と使いやすさが重要なところではないのでしょうか。 うーん,そんな研究発表してみたい! |
塩崎@東北大水産化学 | 2001.03.16 | >私の場合は6時間おきに死後硬直(改良Cutting法でしたっけ?),ATP量,破断 >強度(肉の硬さ),顕微鏡写真とかやってました。 死後変化は貯蔵温度でも変化するということで、うちらは室温で放置した魚についてやってました。 夏場だけに臭いもきついきつい。ちなみに死後硬直(RI値)ATPの変化(K値)、肉質pHなど測りました。大人数での学生実験なので、みんなに行き渡る実験装置が限られていたので。 レオメーターを使った破断強度は卒論&修論として、うちの研究室の院生が研究しています。 こんどの水産学会4/3の午前中に発表するのでもしよろしかったらこちらもどうぞ。 ちなみにこの実験、夏の臨海実習で泊まりがけでやってたので、お酒飲みながら実験したりやりたい放題でした。 実験に使う魚はその日に捕れた魚を使ったので、いろんな魚がいて面白かったなぁ。 カジカなんて苦悶死させようとして空気中に放置してもなかなか死ななかったり。いい思い出です。 |