水産物とバイオテクノロジー

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近江富士 2000.06.29 貝の養殖にも バイオテクノロジーなんかが採用されているのでしょうか。
また 貝以外でも水産物で携わっている方の 様々なご意見 お聞かせください。
近藤 2000.06.29 水産物に応用できるバイオテクノロジーというと、みなさんどのようなものを想像されるのでしょうか?
また、現実にどこまで活用されているのでしょうか?
実際に研究成果が実用できるとして、どこまでなら「応用」してもよいと思われますか?
たとえば、遺伝子組み替え。
作物については「表示する」「しない」などでもめているようですが、脊椎動物でも技術的にはできるものもあります。
それをするメリットがあるかどうかもふくめ様々な問題はありますが。。。
難しい問題です。
河原@福山 2000.06.30 > 水産物に応用できるバイオテクノロジーというと、みなさんどのようなものを想像されるのでしょうか?
染色体操作や,性の統御がメインですよね。

> また、現実にどこまで活用されているのでしょうか?
> 実際に研究成果が実用できるとして、> どこまでなら「応用」してもよいと思われますか?

農業や,畜産では育種が太古の昔からなされていたので,現在のバイテクが応用可能なんだと思います。
まず,品種ありき。
水産では,育種に関する歴史が,観賞魚を除いては,ごく限られた種類がホンの数十年です。
同じことをしようとしても土台無理。と私は思う。
でも,バイテクを取り入れた計画を打ち出さないと予算化されにくいと言うジレンマ,こういう体質あるんですよね。
 水産生物育種は「魚貝類を飼う」という現場の努力なくしては一歩も進みません。
DNAをいじるにしたって,「遺伝的に優れた魚」の存在がなければ,なかなか話が進まないのです。
これからは,養殖業者さんの育種的センスの有無が水産を進展させる鍵を握っていると思います。
「魚の個性を見極める眼力」こんなんあったらいいですね。

> たとえば、遺伝子組み替え。
> 作物については表示する、しないなどでもめているようですが、
> 脊椎動物でも技術的にはできるものもあります。
> それをするメリットがあるかどうかもふくめ様々な問題はありますが。。。

面白そうだからやってみようと言う「あそび」が科学にも必要だと思いますが,研究ごっこにならないようにするためには,近藤様のような問いかけをされながらお仕事を進められるのが大切だと思います。
××大学が開発し,学会の注目を浴びている「遺伝子組み替え魚」よりは,○○養殖場と□□大学共同で作り上げた「優良品種△△28号」なんていうほうが,消費者には受け入れやすいのでは。

> 難しい問題です。
純粋科学と,応用科学,役割分担が必要ではないかと思います。

・・・・と,ここまで書いて,近藤さんのメールアドレスを見て釈迦に説法しているのではと不安になった河原でした。失礼がありましたらお許し下さい。
田嶋@福岡 2000.06.30 現在日本の海面養殖の主要魚類については
 ブ リ   天然種苗 モジャコからの養殖
 カンパチ 中国 海南省からの天然輸入種苗からの養殖
 マダイ  人工種苗から養殖
 ヒラメ   同  上
 トラフグ  同  上 及び 天然親魚から採卵して人工種苗を生産養殖
*もちろんブリとカンパチにも人工種苗はあります。
*ヒラメは雌の成長が早いので人工的に全て雌を作る技術が開発されており、わずかですが養殖されています。
養殖用人工種苗はとして成長の早さがもっとも重視されます。そのため何代もかけて親魚を選抜しています。
それぞれの人工種苗に有名ブランドがあり、有名になると養殖場からの注文が増加するため、そのブランド種苗を親に育てて自家用の親魚とする事がよくあります。
以上のような状況なので河原さんの言われるように「優良品種○◎号」の方が実状にあっていると思います。
平野@
サルディニア島
2000.06.30 > 水産物に応用できるバイオテクノロジーというと、みなさんどのようなものを想像されるのでしょうか?
> また、現実にどこまで活用されているのでしょうか?


この応用には大きく分けて2つあると思います。
(1)増養殖における、成長促進や耐病性への応用(直接的、遺伝子操作)
(2)水産品(鮮魚、加工品)の品質検査への応用(間接的、遺伝子検査)

(1)につきましては河原@福山さんがおっしゃるように
> まず,品種ありき。
の点があると思います。しかしニジマスなど種苗生産技術の確立している重要養殖種では品種がありますし、田嶋@福岡さんからのお話では、他の魚種も進んでいるようですね。
かなり近い将来、「遺伝子組み替え魚」が市場に出てくるのではと思います。
研究レベルではもう作られていますし。これが生産者、消費者にとって”良い”ことなのか”悪い”ことなのかは難しい点だとは思いますが。

(2)は、いま一つピンとこない点があるかと思います。
例えば、少し前になりますが、日本で売られていた鯨類の肉をDNA鑑定法で、本当に表示通りの種なのかを調べたという報告がありました。
この方法を使えば、このところ問題に上がっている産地表示の”しんぴょう”性(すみません。うまく変換されません、第2水準なのかな)を調べるといった事も可能になって来ると思っています。
また増養殖の場で、ある病気が出て、生き残った個体、死んだ個体の遺伝的な差を検出して、今までは長年の経験に頼っていた選抜育種の時間を加速させるという可能性もあるのではないのでしょうか。(これなら予算化されるかな?)

河原@福山さんの
> 水産生物育種は「魚貝類を飼う」という現場の努力なくしては一歩も進みませ>ん。DNAをいじるにしたって,「遺伝的に優れた魚」の存在がなければ,なかなか話が進まないのです。これからは,養殖業者さんの育種的センスの有無が水産を進展させる鍵を握っていると思います。「魚の個性を見極める眼力」こんなんあったらいいですね。
という意見には全く同感いたします。
現場の養殖業者さんと一緒に研究が進められる場が、さらに整備されればいいですね。

これまで現場でがんばってきて下さった諸先輩方の前で”生意気な”ことを並べてどうもすみません。
でも以上のような点で、このFishMLの存在は生産者、消費者、研究者の今までには実現の難しかった率直な意見の交流の場としてとても良いものだと思っています。
琵琶湖の小鮎さん、どうもありがとうございます。これからもがんばって下さいね。



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