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2002年の鰻      ウナギのリンク集
昨年11月から始まっている台湾のシラス漁は、昨シーズンと大きく異なり、大不漁となっている。そのため、国内養殖場の池入れも昨年と比較するとかなり遅れているらしい。
国内のシラス漁の状況は、九州では順調に採捕されているようだが、ここ数年よくとれていた波崎方面が悪いようだ。
1月中旬の「闇の大潮」がどうなるかによって、今年の大勢が決まり、小売りの関係でも計画化がしやすくなってくると思う。
台湾のシラス不漁を受けて、業界ではすでに「春頃の相場回復」が予測されている。それによると、活鰻池上げ価格はkg1400〜1500という声もあるようだ。それどころか、kg1800円などという景気のいい話も出ている。
確かに、そういう相場になれば、養鰻業者は一気に息を吹き返し、新規参入も出てくるかもしれない。
それ自体はいいことなんだけれど、果たして、そう単純にいくのだろうか。
いつも思うのだが、消費の実態を考えて相場論が語られることが少ないようだ。
食品である水産物は、最終的には「消費者の口に入るもの」である。つまり、消費者が食べてくれなければ、生産も流通も成り立たないのだ。したがって、消費されるのかどうかを考えた上で、相場論を語らなければ何の意味もない。そうしなければ、まさにそれは「机上の空論」としか言えないだろう。
消費の実態はいうまでも無い、厳しい状態であることは誰でも分かっているはずだ。そりゃそうだろう、小泉不況のもとで統計上の失業率は6%に迫っている。実態としては10%を越えていると考えるべきだ。つまり、10人に一人は失業者なのだ。
職に就いている人も今までとは違う。ボーナスの切り下げによる直接的な賃下げや子会社への出向等々、賃金は目に見えて下がっている。私自身で言ってみても、年収は最高時より20%程度低下した。この夏、例年行っている山登りには行かなかったし、この冬のスキーも行けないだろう。年収に対する住宅ローン返済の比率がすごく高くなってきた。それに、医療費や教育費の負担も大きいし、これが食費や娯楽費を圧迫している状態だ。
こういう状況の中で、単純に「相場が上がる。養殖業者には朗報だ。」と言えるのだろうか。
中国産の蒲焼き4pサイズの小売値は、1尾300円〜400円ぐらいのようだ。店によっては、3尾980円売りとかもしている。
サイズによっては、ハーフやサードカットを1枚100円とかで売ってるものもある。
国産蒲焼なら、冷凍で580円〜680円、活鰻蒲焼で980円ぐらいが末端価格である。(もちろん、特売ではもっと安い。)
現状がこのような値段であり、そして、こういう価格帯で売られはじめて2年ほど経過しているわけだ。消費者は、鰻とはこういう価格帯のものという認識をしている人が多くなってしまった。それが実態だし、実は大変なことなのだ。
少し話を変えるが、この年末、お店に応援に行った。養殖鯛の切り身がたくさん残ってしまった。
店の水産担当者と話をしていたのだが「値段が高い。2切480円、3切680円なら売れるけど、今の相場なら2切680円、3切980円になるし、大量販売は不可能だ。」と言っていた。
2〜3年ほど前には、養殖鯛の価格は激安だった。一時は、kg単価でイワシより安くなったことがあった。
どこのスーパー・サカナヤも、養殖鯛をどんどん売った。700g大の養殖鯛を、1尾680円で売っていた店もあった。(バカなことをしてると思ったが・・・) 消費者に、「養殖鯛はこの程度の値段のモノ」という感覚をすりこんでしまった。
産地の生産調整や鯛養殖からの撤退が増えて、相場は回復した。それ自体は、鯛養殖業者には良いことだったのだが、消費地では上記の通りの状態になったのだ。つまり、売れなくなってしまった。
私感であるが、養殖鯛には養殖鯛にふさわしい価格帯があるはずだ。そこをはずすと、消費者の感覚とずれが出てしまい、あとあと、困難な状況に陥ってしまう。これは、業界にとってはいい経験であったはずなのだ。
私は、現在の鰻の状態が、上記の養殖鯛と同じに思えるのだ。
消費者は、「鰻は安いモノ」と思ってしまっている。こういう感覚を消費者にすりこんだのは、鰻業界なのだ。
そういう現実があることを十分認識した上で、相場論を語ることが必要だし、末端価格がいくらなら売れるのかを考えながら、池上げ価格を考えるべきだと思う。そうしなければ、今度は本当に、鰻業界は消費者に見捨てられてしまうのではないかと、私は危惧する。

  
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