この中に、四国産の鰻の稚魚がいます。
約7センチくらいで、透き通っているため よく見えません。 この中に入っているだけで10万円くらいします。 (97年の相場です。) |
一般的に、世界中には「鰻」は何百種(一説には「何千種」)もいるといわれています。 日本では、昔から「アンギラ・ジャポニカ」という種類の鰻を食べてきました。普通「ジャポニカ種」または「和種」「和鰻」と呼ばれています。 この鰻はフィリッピン沖の深海で産卵し、孵化したレプトセファルスと呼ばれる稚魚は、はるばる北上してきます。この間、何を食べているのか、よく分かっていません。年末から4月頃にかけて、鰻の稚魚は体長2センチ〜3センチ、体重0.15g〜0.2g程度に成長し、台湾、韓国、朝鮮民主主義人民共和国、中国、日本の沿岸に達します。これを普通「シラス」といい、採取して養殖するのです。 鰻の養殖は、昔から「三河」が本場といわれてきました。高度成長の時代に、三河から地方へのシフトが始まり、今では鹿児島が大きな位置を占めています。 しかし、現在では養殖の主流は国内より中国や台湾、韓国に移っています。なかでも中国は、経済発展を目指す国策に沿う形で養殖池の拡大や鰻蒲焼き加工場の建設が進み、一昨年あたりから先発の台湾を追い越したとみられています。そして、これらの多くが「台湾資本」であることも、重要な特徴です。 国際的に見た場合、ヨーロッパはアジアとは異なった文化圏として食文化そのものが異なっており、鰻を燻製にして食べるのが多いようです。鰻の種類も違い、「アンギラ・アンギラ」という「ヨーロッパ種」の鰻です。業界では、「フランス鰻」といっています。この鰻の特徴は、「ジャポニカ種」と比較すると「太くて短い」ことです。また、脂肪分は「ジャポニカ種」より多いようです。(実際に「フランス鰻」の活鰻を焼いた方が「脂がタラタラ落ちて、部屋中煙だらけになった。」といっておられました。)皮が硬いことも特徴の一つで、伝統的な焼き方である「炭焼き」にした「フランス鰻」を食べましたが、皮がゴムのようでした。中国で加工されている「フランス鰻」の蒲焼きは、「焼き」の工程より「蒸し」の工程が重視されており、ここで柔らかさを出しているように思います。 さて、今年(1997年)の「ジャポニカ種」のシラスの採捕量は、昨年同期比で75%と、非常に低い数字になっています。相場も、下記のとおり非常に高い物になりました。
このような状況のなかで、「ジャポニカ種」はかってなく高い販売価格になることは確実で、各養殖池とも在庫を温存し「土用の丑」まで持たせようとしています。そのため、必然的に太物が中心になり、細物の出回りが無くなってきました。そこに割って入ってきたのが「フランス鰻」です。「フランス鰻」はシラスの価格が安く(1kgで5万円くらい)、少々歩留まりが悪くても儲かるという事で中国に大量に搬入され、中国の奥地で流水養殖されています。これが、日本向けの鰻蒲焼の原料として使用されるようになりました。 昨年は、「フランス鰻」の蒲焼き製品が約8000トン程度輸入されたと見られています。今年は、さらに増加し、昨年の2倍程度が見込まれています。 それでは、「フランス鰻」の蒲焼きはどこで売られているのでしょうか。 大手量販店では、鰻の売り上げは非常に大きいです。今年の「アンギラ・ジャポニカ」の相場では、細物を大量販売できる価格にはなりません。(2尾980円とかは絶対無理です。) そのため、大量販売用として、多くの量販店が「フランス鰻」を確保したようです。したがって、大手量販店が、チラシなどに出す安い鰻蒲焼は、99%近い確率で「フランス鰻」でしょう。 生まれは「フランス」、育ちは「中国」、加工も「中国」という商品が、今年は日本でも氾濫しそうです。 |