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鰻の偽装表示、行政の責任は重い   ウナギのリンク集
4月の末に、東京に行きました。
東京に行ったときは、いつも「デパ地下」や話題になっているスーパー・量販店を見に行くようにしています。
なぜなら、東京で流行っていることが、そのうち、京都にも流れ込んで来るのははっきりしているのですし、この業界は、流れの先を読み、それにどう対処していくのかの方針をきちっと持っていなければ、生き抜いて行くことが難しいのですから、情報収集が決定的に大事なのです。
ただ、私のまわりでは、予算もなくヒマもないという理由で、なかなか、そうしたことができない会社や組織も多いのが実態です。でも、大事なことは大事なこと、機会をみつけて、足での情報収集に力を入れて頂きたいです。

私は魚が専門で、中でも鰻に興味があります。(最近は、インターネットのほうにも足を踏み入れていますが、、、)
ですので、店を見るときは、鰻を中心に魚の売場を見ます。
4月末と言えば、暖かくなって「鰻の売れ行き」が、一つのピークになる時期です。
この時期の販売状況が、それ以降、夏に入っての品揃えのありかたや売れ行きを占うものともなっているのです。
そんなこともあって、上野、御徒町、渋谷、池袋などの、名のあるお店の鰻売場を見て回りました。
その中で、いくつか疑問を感じたことがありますので、そのことを書いてみます。

4月の末ですから、どう考えても、国内養殖場からは「新仔」が出荷されていない時期なのに、「新仔」のシールを貼った蒲焼きが、二つのお店で売られていました。
また、以前から「産地偽装」として何度も噂になった蒲焼きが、「現在の国産相場」ではとても売ることができないような安値で、堂々と「国産」表示で、それも、名のあるデパートの地下食料品売り場(テナント)で売られていました。
上野のアメ横の魚やさんに、こうした商品が並んでるのでしたら、私も「さもありなん」と納得するのですが、日本を代表するいくつかのデパートで売られているのですから、無視できることではないと思いました。

上では、「東京での季節はずれの新仔鰻」のことを書きましたが、これが関西にも出回っているのがわかりました。
5月中旬過ぎのこと、私の友人があるところで買ったのが「新仔380円」という表示の小さめの蒲焼きでした。
私は、「そんなあほな・・・まだ、新仔は、九州も三河も出てへんで」ということで、これが「怪しい鰻だ」という話になったわけです。東京で起こっていることは、ほどなくして京都でも起こるという実例です。
「日本養殖新聞」さんが、「中国産の鰻蒲焼をリパックして販売している」という報道をされたのは、2000年の9月5日号でした。私はこれを見て、鰻業界として、そういった商品が出まわっていることを、はっきり認めたということで、画期的だと思いました。
それで、この問題を私が主催しているfishmlに投稿し、会員の皆さんに議論していただきました。
fishmlの会員さんは、川下の消費者から川上の養殖業者、その間にいる各段の流通業者や加工業者、さらに研究者や釣り人などなど、いろんな立場の方がおられますので、当然、さまざまなご意見が出てくるわけです。現状肯定の人もいれば怒ってる人もいる。そうしたご意見をまとめて、下記のホームページに掲載しました。
鰻の偽装表示問題が社会的に問題になった端緒は、ここからなのです。
 http://www.fishml.com/uonoryutu/ripakkuunagi.htm
あれ以来、もう3年半もたっています。この3年半の間に、「偽装表示」などの誤魔化しについての世間の目は、非常に厳しくなりました。当然のことだと思います。
しかし、こと「鰻の偽装表示」に限っていえば、テレビ・新聞などで色々と報道されてきましたが、いまだにその根を絶つことができていません。
それどころか、不景気が浸透する中で、末端小売業者の経営悪化が進み、会社をつぶしたくない、なんとか利益を出したい、という当たり前の願いにつけこむ形で、悪辣・巧妙な手段が使われるようになってきたと思います。
この状況について、私が問題に思うのは、行政がこうした消費者騙し、不正に対して、その根絶を目指して強力に取り組んできたかどうかということです。
私が、一消費者として見た感じでは、とても本気でやっているように思えません。
昨年でしたか(一昨年だったか?)、行政は「土用の丑」の前に、メーカーや小売店に点検に入り、結果的に「最盛期である商売の邪魔をした」ようなかっこになってしまいましたよね。
それ以降も、我々が見ることのできる「小売店の売場」では何もかわらず、あいかわらず「怪しい鰻」が売られているのが現状で、業界の状況は改善されていないのです。
業界で、「あれはなーー、****や」と、苦々しく語られているにもかかわらず、実際、手つかずで、同じような偽装表示商品が繰り返し出回っているのが実態なのですからね。
問題の抜本的解決を図るためには、「嘘つき食品から消費者を守るガードマン」としての役割を、行政が本当に消費者の立場に立って「強力」に果たしていく事ができるかどうかという点が、問われていると思います。
それが実践をされれば、鰻業界の健全な発展にもつながるのではないかと思います。行政の責任は重いですよ。
この間、負の話題で有名になった二つの企業。三菱自動車のクレーム隠しと鳥インフルエンザの浅田農産。
こうした問題を起こした企業や業界は、それぞれで「村社会」を形成しています。
結果として浅田農産は会社解散。三菱自動車は次々とリコール隠しが発覚し、会社の存立自体が危うくなりそうな状況になっています。「村社会」の中だけで通用するルールが世間に通用しなくなり、世間から糾弾されているのです。
鰻業界について言えば、「業界の常識は世間の非常識」というのが、まだまだ、大手を振ってまかり通っている世界ですし、そういう意味では立派な「村社会」だと思います。
である以上、三菱自動車や浅田農産の件を「対岸の火事」視せず、自らの問題として捉えることができるのかどうか、業界として厳しく問われていると思います。


  
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