フグ毒について

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高山@鹿児島 2000.09.16 9月から特別展示でフグを展示していまして、昨日研修がありましたが、よくわからない事が2点ありましたので、よろしければお教え下さい。
  1. フグ毒について
    • テトロドトキシンを持っている生物は、ツムジハゼ、ヒョウモンダコ、スベスベマンジュウガニがいるんだそうですけど、フグもそうなんですが、なんでこれら生物はこの毒に毒されないんでしょう?
    • バクテリアがこの毒を持っている事は教えてもらいましたが、一体どこでどんな形でこのバクテリアは発生しちゃうのでしょうか?
    • 致死量にいたる量は十匹に1匹の割合いであると言うのはそうですか?
  2. 中国、長江では、ある時期にフグが海から川へそ上するそうですが、それを見た様が河の豚の様との事で、「河豚」と中国語で書くそうですけど、いったい、なにしに川をのぼるんでしょう?   産卵ではないでしょう?
ハンブル仁保 2000.09.16 > テトロドトキシンを持っている生物はツムジハゼ、ヒョウモンダコ、スベスベマンジュウガニがいるんだそうですけど、フグもそうなんですが、なんでこれら生物はこの毒に毒されないんでしょう?
これらの生物が、自分の持つテトロドトキシン(TTX)で死なない理由は詳しくは解明さ れてなかったように記憶しています。
ただし、研究というものも日進月歩ですので、今時点のことはわかりません。
神経細胞のつくりが違ったり、神経細胞以外にTTXをくっつけておく場所があったりするのでしょうかね。
他種の魚に、注射でTTXを投与すると死んでしまいます(餌にまぜるとはいてしまうそうです)。
また、以外にもトラフグで他魚種の約300倍、クサフグで約1000倍投与すると死んでしまったそうです。
このことを考えると、毒がきかないのではなく毒に対しある程度の抵抗があるということになるのでしょうか?
発生源ですが、もともとはこのバクテリアはフグの餌となる貝などがもってるんですよね。
フグが貝と一緒に食べて、そのバクテリアが腸に住みつき産出するTTXをフグが吸収するというのを聞いたことがあります。
最近、TTXの供給源が外部要因だけでなく、遺伝的な内部要因によるところもあるのではないかという研究を、雑誌でよみました。
た しか、山口県の水産試験場かどこかの方の研究だったと記憶してますが。
あと、蛇足ですが今月末に福井県立大学で行なわれる水産学会において、東海大学の斎藤先生が「ツムギハゼ餌料生物におけるフグ毒および同関連物質の検索」という題名で発表されます。
聴きにいきたいのですが先立つものが無いので残念です。

> 中国、長江では、ある時期にフグが海から川へそ上するそうですが、それを見た様が河の豚の様との事で、「河豚」と中国語で書くそうですけど、いったい、なにしに川をのぼるんでしょう?産卵ではないでしょう?
メフグのことですね。ちょと調べてみたのですがわかりませんでした。
産卵場所は青島や海南島、大同江平城とされています。時期は5月6月あたり。
ただ同じ仲間かは知りませんが、中国の湖沼にいつくやつもいるらしいです。もちろん食用らしいです。
これらのことは僕も是非知りたいので引き続き調べてみようと思ってますし、やっぱりもっと詳しいかたの明解な意見を一緒に待ちましょう。
ハンブル仁保 2000.09.16 先ほどのフグ毒の追加です。
返事をさせてもらった後、うちの研究室の先生と 「フグのテトロドトキシンに対する耐性てあまりわかってないんスよね。」 「アホか、これ読め。」 ということで、海洋毒についての本をおかりし勉強しました。
まず実験の話です。
フグ肝臓の抽出物を、ある方法を使い成分的に大きいものと小さいものに分けます。
小さい方にはテトロドトキシンが含まれ、これをネズミに与えると見事に麻痺中毒します。
問題は大きいほうです。これをそのままネズミに与えてもなにも起きません。
しかし、この成分を塩酸とともに加熱(加水分解といいます)すると有毒化するそうです。
すなわち、フグ肝臓中でテトロドトキシンはあるタンパク質と結合し無毒化しているらしいのです。
それともうひとつ。
フグとヤモリ(もちろん有毒種の)は、テトロドトキシンに対して神経が鈍感なのだそうです。
その理由として、テトロドトキシンは神経毒で神経の伝達を邪魔するのですが、その邪魔する時に神経のナトリウムチャンネルというところにくっつきます。
そのナトリウムチャンネルの構造が、有毒種のものは他の動物とは違いテトロドトキシンがくっつきにくいらしいのです。
ちなみに、フグの仲間でも無毒種のサバフグなどは、テトロドトキシンの耐性が有毒種と他の魚種の中間ぐらいなのだそうです。カワハギはさっぱりダメみたいです。
しかし、あくまで現在予想されるもののうち有力なものだそうです。
そのように書かれると決定打にかけますが、これらのことが複合的に関与するのではないのでしょうか。
ちなみに参考にした本は、「海洋動物の毒」(フグからイソギンチャクまで)成山堂書店
東京水産大学の塩見先生と長島先生がお書きになっています。
いろいろな海洋生物の毒について書かれていておもしろいです。 ちょっと高い2800円。
高山@鹿児島 2000.09.17 > フグ肝臓の抽出物をある方法を使い成分的に大きいものと小さいものに分けます。小さい方にはテトロドトキシンが含まれこれをネズミに与えると見事に麻痺中毒します。問題は大きいほうです。これをそのままネズミに与えてもなにも起きません。しかしこの成分を塩酸とともに加熱(加水分解といいます)すると有毒化するそうです。すなわちフグ肝臓中でテトロドトキシンはあるタンパク質と結合し無毒化しているらしいのです。
なあるほど!! これって、人間の胃液のペプシンがペプシノーゼになっていて、消化する際に、変わると言うのと何だか似てるような。。。^^;; だから消化管は溶かされない。。?

> フグとヤモリ(もちろん有毒種の)はテトロドトキシンに対して神経が鈍感なのだそうです。その理由としてテトロドトキシンは神経毒で神経の伝達を邪魔するのですが、その邪魔する時に神経のナトリウムチャンネルというところにくっつきます。そのナトリウムチャンネルの構造が有毒種のものは他の動物とは違いテトロドトキシンがくっつきにくいらしいのです。
もう、すでに、他の毒もってるしぃ、、 いらないから。。ってことでしょうか。。^^;;

> ちなみにフグの仲間でも無毒種のサバフグなどはテトロドトキシンの耐性が有毒種と他の魚種の中間ぐらいなのだそうです。カワハギはさっぱりダメみたいです。
カワハギくんは死んじゃうんですね。。
かに@沖縄 2000.09.20 養殖フグには毒がない、というのは知られていますが、生け簀に有毒フグを一尾だけ入れておくと、やがてすべてが有毒になってしまうそうです。
その様子を、やはりどこかの大学か水試が観察した様子をテレビで観ました。
なんと、無毒フグは有毒フグに噛みつき、体表組織を食いちぎっていました。
それで毒を取り込む、と言ってましたが、それはつまり、そのバクテリアを体内に取り込むということで良いのでしょうか。
その辺の説明も、番組であったかも知れませんが憶えていません。

> 中国、長江では、ある時期にフグが海から川へそ上するそうですが、それを見た様が河の豚の様との事で、「河豚」と中国語で書くそうですけど、
日本語でも漢字表記はそのまま河豚ですね。
海豚はイルカなのでつながりがなく、妙な感じ(漢字)...ガクッ。
長江は、大きな川ですよね。淡水域まで遡上するのでしょうか?
観賞魚として、淡水フグという5cm内外の小さなフグが売られていたので買おうとしたら、水槽に少し塩分を入れる必要があると店員に言われてあきらめました。
沖縄にもオキナワフグという、やはり小さなフグがいまして、これもずいぶん塩分の低い水域まで大群で遡上しているのを見たことがあります。
フグ類には、水域でも生活できるものが多いということなんでしょうか。
ついでに申し上げますと、ボラも全く潮汐の影響を受けないような上流まで侵入してきます。
ヨウジウオも淡水で観ますが、こちらは淡水種もあるのですか? あるいは回遊するという話もあるのでしょうか。
奈良のハンブル 2000.09.20 > なんと無毒フグは、有毒フグに噛みつき、体表組織を食いちぎっていました。それで毒を取り込む、と言ってましたが、それはつまりそのバクテリアを体内に取り込むということで良いのでしょうか。その辺の説明も番組であったかも知れませんが憶えていません。
これはテトロドトキシンを欲しがっているのだと思います。
フグはバクテリアが見えてるのかな、知ってるのかな?という疑問がありますので。
また参考ですが、今年8月号の月刊養殖に長崎大学の野口玉雄先生の研究内容が載っていました。
それは、養殖トラフグ用餌料に、ナシフグから抽出したTTXを混ぜて与えるというものです。
するともちろん、有毒養殖トラフグとなります。しかし、そのトラフグの免疫力は向上したそうです。
またトラフグ養殖で問題とされる共食いも防げるのではないかという推測もされています。
かつてTTXは人間用鎮静剤として使われていたらしいですし、素人頭でもストレス予防作用もあるかなと思えてしまいます。
他の動物には猛毒でも、フグにとっては必要な物質なのではないのでしょうか。TTXって。

> 長江は、大きな川ですよね。淡水域まで遡上するのでしょうか?観賞魚として、淡水フグという5cm内外の小さなフグが売られていたので買おうとしたら、水槽に少し塩分を入れる必要があると店員に言われてあきらめました。
武漢というところまで遡上するそうで、地図で見ましたが、たいがい上の方でした。
長江全体から見れば中流域ぐらいでしょうけど。まぁここまで潮が上がってくるとは思えませんし。

> 沖縄にもオキナワフグという、やはり小さなフグがいまして、これもずいぶん、塩分の低い水域まで大群で遡上しているのを見たことがあります。フグ類には、汽水域でも生活できるものが多いということなんでしょうか。
食べれるンですか?うまいンですか?

> ついでに申し上げますと、ボラも全く潮汐の影響を受けないような上流まで侵入してきます。ヨウジウオも淡水で観ますが、こちらは淡水種もあるのですか?あるいは回遊するという話もあるのでしょうか。
昔、故郷の川で、河口から1kmぐらいの辺かな?友人と釣りに行って、その彼が5cmぐらいのチヌを釣っていました。
かに@沖縄 2000.10.02 > するともちろん有毒養殖トラフグとなります。しかしそのトラフグの免疫力は向上したそうです。またトラフグ養殖で問題とされる共食いも防げるのではないかという推測もされています。
外から毒を取り込んで、それが自らの免疫力も高めるのなら一挙両得ですね。
さて、ここで疑問なのですが、養殖フグは無毒、と言っても、やはりその調理には資格が必要なのでしょうか。
私は必要ではないか、と想像してます。
一般に無毒であっても、たまたま生け簀の網目をくぐり抜けたり、網のそばにやってきた天然フグがいたとして、それをかじれば有毒化する可能性もゼロではないですよね。

> 武漢というところまで遡上するそうで、地図で見ましたがたいがい上の方でした。長江全体から見れば中流域ぐらいでしょうけど。まぁここまで潮が上がってくるとは思えませんし。
すると完全な淡水でも生活できるのですね。すごい適応力!

> 食べれるンですか?うまいンですか?
どうなんでしょう?普通のフグの形をしているので、やはり毒がありそうです。
しかし私が見かけたのは10cmに満たないようなものばかりです。
奈良のハンブル 2000.10.02 > 養殖フグは無毒、と言っても、やはりその調理には資格が必要なのでしょうか。私は必要ではないか、と想像してます。一般に無毒であっても、たまたま生け簀の網目をくぐり抜けたり、網のそばにやってきた天然フグがいたとして、それをかじれば有毒化する可能性もゼロではないですよね。
それはダメでしょう。 都道府県によっては、まるのままのフグを持ち歩くことすら素人では出来ないはずです。大阪はたしかそうでした。
養殖は解禁して天然はダメとしてしまうと、区別が難しくなるのでは?
そのへんがあいまいになってくる恐れをかんじます。
見た目では結構区別つくらしいのですが。養殖と天然は。

> すると完全な淡水でも生活できるのですね。すごい適応力!
フグは生命力強いらしいです。

> どうなんでしょう?普通のフグの形をしているので、やはり毒がありそうです。しかし私が見かけたのは10cmに満たないようなものばかりです。
小さいですね。食用にも認められていないようですし。
しかしそのフグに関する文献とかもないのですか?
非食用フグでもよく本とかに紹介されているのに。ドクサバフグとか。 鑑賞用にいいか?
海童 2000.10.02 >それは養殖トラフグ用餌料に、ナシフグから抽出したTTXを混ぜて与えるというものです。するともちろん有毒養殖トラフグとなります。しかしそのトラフグの免疫力は向上したそうです。
これの免疫力とはどういうことでしょうか? ご存知ですか?
病気に対する抵抗力ではないですよね。それとも、この意味ですか? 養殖の記事では詳細はわからないので。
奈良のハンブル 2000.10.03 > これの免疫力とはどういうことでしょうか? ご存知ですか?病気に対する抵抗力ではないですよね。それとも、この意味ですか?
正直なところ、僕はフグ毒に関して専門ではなく情報量も少ないのですが、水産「技術と経営」に同様な記事を見つけましたので少しだけ引用させていただきます。
すでに読まれておられるのならごかんべんを。
「その(毒を与えた)結果、(中略)脾臓内のリンパ球の分裂能力が平均で3倍になるなど、免疫力がアップした。」 また共食いは病気の原因とされてますので、そういったところからも免疫力の向上につながると考えておられるのではないでしょうか。
坂東@東京 2000.10.04 フグ毒についての本の紹介です。 ちょっと古い本ですが、一般向けに書かれた本でなかなかおもしろかったです。
毒はないかもしれませんが、怖くてちょっと食べたくないですね。

以下は、紀ノ国屋 Bookwebからの転載です。
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ポピュラーサイエンス フグ毒のなぞを追って ISBN:4785385200 123p 19cm(B6)
裳華房 (1989-07-20出版) ・清水 潮【著】 NDC分類:487.76 本体価:\1,200

フグ毒についてのわたしたちの知識の展開は、じつは化学・生物・微生物の三つの異なる分野にまたがる研究によって生まれたものです。
フグ毒をめぐるなぞを追及する道で、研究者は、はじめ海の動物たちに、ついで微生物たちに出会い、ついに、それらの生物が網の目のようにからみあっている「海の生態系」に引き入れられることになります。
海にひそむフグ毒のなぞを解く中で、研究者たちが歩いてきた道を、わたしたちはこれからたどってみましょう。
  • ゾンビ伝説(よみがえった死者たち;ゾンビパウダー―起死回生の薬;論争はつづく ―科学か非科学か)
  • フグと毒(フグを食べる民族;フグ毒の本体;フグ毒のはたらき)
  • フグ毒をもつ仲間たち(厚化粧のカエルとイモリ;海の動物たち;動物たちにとってのフグ毒の役割;フグはフグ毒に強い)
  • フグはフグ毒をつくらない(群れの多くは毒の弱いフグ;養殖フグは安全?;フグの毒はどこから)
  • だれがフグ毒をつくったか(食物連鎖を追う;探索の目はバクテリアに;フグ毒をつくる細菌;多くの細菌がフグ毒をつくる)
  • 細菌にとってフグ毒とは(むだに毒をつくるだろうか;考えられるフグ毒のはたら き)
  • フグ毒の起源(なぞを解くかぎは海底に;フグ毒の起源をたどれば)
  • 海の細菌のつくるもの(問題はひろがる;豊かな海の遺伝子源;マリンバイオテクノ ロジーとの接点)
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