カイダコのこと

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波平 2005.10.11 わたし、ブログにカイダコのことを、「黒潮に乗って主に日本海へやってきて…」と、書いたら、「黒潮に乗って」流れているというのは真っ赤なウソです」と、コメントが入りました。
で、どうなのか自分で調べるのだが、どうにもわからない。
どなたかお教え願えませんか。

また、「カイダコ」は“貝蛸”の意かと思うのだが、ひょっとして“櫂蛸”じゃなかろうかとも思う。
二本の平たい脚が櫂に見えるようにも思う。
わたし、カイダコの貝は持っているが、中に住まっていたはずの蛸はまだ現物を見たことない。
ましてやどのような様子で蛸が住まっているのかは、写真で観て想像する以外ない。
でも、これが海中を泳ぐなら、脚は或いは櫂の役をするのではなかろうか。
この貝部分は、まことに美の極致ですな。極めて日本的な美だ。
で、以上、気になってしょうがない。
白浪@舞鶴 2005.10.12 え〜っと,「黒潮に乗って日本海にやってくる」ていうのは正確ではありません.
日本海を流れる対馬暖流は,昔は黒潮の支流と考えられていました.
現在では,黒潮とかその周辺にある熱帯性の海水と長江とか黄河の河口域にできる塩分の低い沿岸水が,九州西岸で混ざり合ってできた水が,対馬海峡から吸い込まれ津軽海峡から流れ出すっていう風に考えられています.
この二つの海峡は高さが少し違うのだそうです...津軽<対馬
で,水は高きより低きに流れるってヤツが対馬暖流の駆動力
つまり,黒潮の枝分かれではない...ってことです.
で,エチゼンクラゲなんかは沿岸水から流れ出し,カイダコやオウムガイは熱帯起源の水から流れているのでしょう.

日本列島の周りに流されてきたカイダコは冬の寒さに耐えかねて死んでしまうのですが,対馬暖流に乗って日本海に入ってきたヤツは北西季節風で日本列島に打ち上げられ,黒潮に乗ったヤツは太平洋のモクズ...
それでカイダコは日本海に多いってことになっているのだと思います.
たぶん,ハリセンボンも同じ.

> 「カイダコ」は“貝蛸”の意かと思うのだが、ひょっとして“櫂蛸”じゃなかろうか
> とも思う。二本の平たい脚が櫂に見えるようにも思う。

生きてるヤツは平たい脚で貝殻を抱えるようにしてるので、どうなんでしょうねぇ...

> わたし、カイダコの貝は持っているが、中に住まっていたはずの蛸は
> まだ現物を 見たことない。

早春から初夏の頃,丹後半島の定置網には活きの良いカイダコがたくさん入ることが多いです.生を酢味噌とか生姜醤油で喰うとかなり美味(^^)
柴田@秋田 2005.10.12 秋田県では男鹿半島の北側で定置網に時々カイダコ(タコブネ)が入ります。
私も定置の船に乗って、生きたカイダコを手にしたことがあります。
また、津軽半島の北端、三厩で獲れたカイダコを貰ったりしました。
どちらも獲れた時は生きていました。
海流の関係と思われますが、男鹿半島北側ではそんなに珍しくないとの漁師の話でした。
うみガエル@清水 2005.10.12 海洋物理的な話題なので久しぶりに参加します.
 対馬海流のメインの水は黒潮系の水です.
白浪さんが仰るように九州西岸で沿岸水と混合した後に流れています.
高さの違いに関して,ちょっと専門的に解説を試みます.
 流れる機構は,対馬と津軽の物理的高さの差ではなく圧力差からです.
物理的な高さ(ジオポテンシャル面)は同じなのですが,温かい水の方が寒い水よりも密度が低く膨張気味なので高くなります.これは力学高度と言います.
温かい水は,ぽこっと盛り上がるので、高いところから低いところに広がるように一面に広がります.
しかし地球の自転の影響で右に曲がろうとします.
ですから温かい水は日本海沿岸(日本側)にへばりついて広がります.
結果として津軽暖流が形成されます.
このように岸にへばる海流ですので「沿岸境界流」とも呼ばれます.
山口正士 2005.10.12 火付け役がそろそろ登場します。
黒潮流域でカイダコがほとんど見られないのに、俗説では南から流れて来ていることになっているようですね。
日本海一帯に広く普通に見られるカイダコが、もしも黒潮起源であれば、沖縄沿岸、そして九州、四国、本州の太平洋岸では見られないことはとても説明しにくいことです。
カイダコはメスが殻を作って卵を産んで守るしかけでしょうから、それが見られる場所が繁殖場所と考えるべきですね。
その卵から孵った赤ちゃんだこたちの運命やいかに。
日本海で死滅しているのだろうか。しかし、それはどうもヘンだなーーー。
日本海の皆さん、誰かちゃと調べてくださいな。
波平 2005.10.12 わたし、今日は朝早くから、海へ魚釣りに出ていて、たった今帰宅。
で、お礼が遅くなりました。
釣果?
ハマチが1本。大きなメバル・ガシラそして豆アジ・チャリコなど等。貧果だねぇ〜。
今日は長潮でね、いわゆる潮が悪いわけよ。で、これだけ釣ったらまぁ上等だわな。
さて、カイダコのこと、おもしろいですねぇ〜。しばらくこれに夢中になりそう。
白浪@さんの、コメント読んで、ずっと昔に寺田寅彦のエッセイで、黄海と日本海の境に水車を作って、大規模発電を計画したお方があったという話を思い出した。
黄河や揚子江が休まずあれだけ大量の水を注ぐのだから、黄海は日本海より水位が高いに違いないと考えたようだ。
同じ寺田寅彦のエッセイに、平清盛が琵琶湖と若狭湾を水路で結ぶことを考えて、息子の重盛に命じて若狭のサバ街道沿いに水路を掘削させたことが書かれてあったように思う。
出展を確かめようとするのだが、なかなか見つからないが、確かそういう話だった。
で、重盛は、水路が出来て、琵琶湖の水が皆日本海へこぼれ出てしまったら困ると考えたらしい。
途中まで掘ったけれど、ヤバイと思って止めたようだ。
義経が攻めてきたりして余裕がなくなったせいもあるかもね。

で、わたし思うのだけれど、かすかだけれど、日本海の方が太平洋より水位が高いのですよね。
加えて、淀川が注ぐ大阪湾は潮汐の関係でドスンと低く落ち込んだりする。
もし、清盛水路が完成していたら、若狭湾から海水がどっと琵琶湖へ流れ込み、淀川から琵琶湖の水がこぼれ出るって構図じゃないか?

対馬暖流の話し、とても面白いですね。
うみガエルさん、なんとなぁ〜、そういうことですか!地球はオモロイなぁ〜、
これも、寺田寅彦だけど、「海の物理学」というのを書いている。以前、途中まで読んで、難しくて読みきれなかった。
だが、今は、ヒマがドッとあって、少しずつ解き読むのは退屈しのぎにもってこいだ。
読んでみようかなぁ〜、楽しみが増えた!
昔白浪さんにお世話になったばんどう@ちょっとだけ聞きかじりです。 2005.10.12 昔習った授業と違うことになっているようなので面食らっております。
細かい質問で恐縮ですが・・・・

>  流れる機構は,対馬と津軽の物理的高さの差ではなく
> 圧力差からです.物理的な高さ(ジオポテンシャル面)は
> 同じなのですが,温かい水の方が寒い水よりも密度が低く
> 膨張気味なので高くなります.これは力学高度と言います.
> 温かい水は,ぽこっと盛り上がるので高いところから低いところに広がるように
> 一面に広がります.しかし地球の自転の影響で右に曲がろうとします.
> ですから温かい水は日本海沿岸(日本側)にへばりついて広がります.
> 結果として津軽暖流が形成されます.
お風呂を考えると、温かい水は上に、冷たい水は下に集まりますよね。
お風呂を日本海に見立てると、湯沸かし器の出口が対馬、一番遠いところが津軽海峡となります。
湯沸かし器で暖められた水は(圧力差により)表層を広がり、一方はじっこの表面にあった冷たい水は、沈み込んでからゆっくりと湯沸かし器の方に向かう・・・
ということは対馬暖流の下層(もしくはコリオリのため中国沿岸)では対馬暖流と同程度の北からの寒流が流れているのでしょうか?
対馬暖流が黒潮の分枝ではないとすると、黒潮からの流入は多くない=津軽海峡からの流出も多くないと考えてしまいます。
そうすると暖流が北に流れる分、北から同じ規模の寒流が南下しないと合わないような気がします。
アバタノオジサン@東京網干坂 2005.10.13 >「カイダコ」は“貝蛸”の意かと思うのだが、ひょっとして“櫂蛸”じゃなかろうかとも思う。
> 二本の平たい脚が櫂に見えるようにも思う。
> でも、これが海中を泳ぐなら、脚は或いは櫂の役をするのではなかろうか。
カイダコの奇妙で美しい姿には、古今東西、多くの人が感心を抱いてきましたが…

アリストテレスも「動物誌」の中でカイダコに言及し、
炭酸カルシウムを分泌する一対の葉状腕を「櫂」や「帆」の様に使い
海面を移動すると考えていたようです。

> この貝部分は、まことに美の極致ですな。極めて日本的な美だ。
此のような、内部の潜在的秩序を直感的に感じ取れる
自然物を見る事は…芸術作品と同じように…

普段、人工物の世界に組込まれ生活している精神を癒します…
くりさん 2005.10.13 > カイダコの奇妙で美しい姿には、古今東西、多くの人が感心を抱いてきましたが
古い話ですが、水産雑学コラム27話(平成11年12月号)で、「カイダコの謎」を書きました。
 http://www2s.biglobe.ne.jp/~kurisan/koramu/tako.htm
既にお読み下さった方も、沢山おいでになりますが、一応宣伝しておきます。よろしく。
MANA 2005.10.13 カイダコの話題、MANAにもイチマイくわわらせてください。
以前、貝井春治郎さんという、若狭高浜の漁師画家のかたを取材し、本にしたのですが、貝井さんの話してくれた中に、カイダコとタコブネについてありまして、二年前に、東京でスケッチ展を催したときのことを記事にして、MANAしんぶんに載せました。
そのときに、ある方から、カイダコの話の質問がありまして、貝井さんが描いてくれた、なんとも絶妙のカイダコのデッサンがあることを、お知らせしたことがあります。
そのときの、ページがありますので、皆さんにもみていただけると、カイダコがどんな生物なのか知らない方にも楽しんでもらえそうです。
 http://www.manabook.jp/hama04-2kaiiTOKYO.htm
荒俣大先生の「世界大博物図鑑」別巻2が「水棲無脊椎動物」で、貝類、タコイカ、ナマコの類がたくさん載っていますが、その253ページいこうにヨーロッパでもこんなに注目されているという、すばらしい図がたくさん紹介されています。
ぼくも、このオウムガイの殻下さいと頼んでいたのですが、まだくれません。
又催促して、もらおうっと。もらったら、写真公開します。では、では。
氷見の定置網にもかかるはずですから、こんど皆さんで、調べてみれば、漁師さんの家に転がっているかもしれませんね。
うみガエル 2005.10.14 > お風呂を考えると、温かい水は上に、冷たい水は下に集まりますよね。
> お風呂を日本海に見立てると、湯沸かし器の出口が対馬、一番遠いところが津軽海峡となります。
> 湯沸かし器で暖められた水は(圧力差により)表層を広がり、一方はじっこの表面にあった冷たい水は、沈み込んでからゆっくりと湯沸かし器の方に向かう・・・

湯沸かし器から噴き出す温水は,熱対流が駆動力ですね.
その後,成層(上に温かい水,下に冷たい水)に向かうのは密度差による浮力,その調整過程としての密度流です.

日本海は,未だに謎が多いですね.
日本海固有水は,あたかも,ばんどうさんの仰る風呂の下層水にも見えます.
また対馬海流自身も日本海内で沿岸流境界流以外の振る舞いも見せます.
全てが岸沿いに流れるのではなく沖合を流れる分枝もあるようです.
また最近では北海道のオホーツク沿岸の流れも実測されはじめています.
日本海の水収支を考えるには,これらも考慮する必要があります.

> 対馬暖流が黒潮の分枝ではないとすると、黒潮からの流入は多くない=津軽海峡からの流出も多くないと考えてしまいます。
> そうすると暖流が北に流れる分、北から同じ規模の寒流が南下しないと合わないような気がします。

これに関しては,対馬海流が黒潮の分枝にしろ,黒潮起源水の流れにしろ、どちらにおいてもバランスしないと行けないと思います.
入った分が何処からか出て行く.
しかしながら対馬海流が黒潮の分枝なのか,他の過程(混合など)を経てからの流入なのかは,議論が終わったわけではないですし,考え方によっては分枝でしょうね.
近年は,黒潮も異常ですから・・・.
カイダコのこと波平 2005.10.14 カイダコのことで、MANAさんにひとつ質問。
「…以前、貝井春治郎さんという、若狭高浜の漁師画家のかたを取材し、本にしたのですが、貝井さんの話してくれた中に、カイダコとタコブネについてありまして、二年前に、東京でスケッチ展を催したときのことを記事にして、MANAしんぶんに載せました」
と、ありますが、
で、全体を閲覧させていただきましたが、記事中後半部分に「…タコブネもアオイガイも…云々」の言葉がある。
全体の文意からすると、タコブネの主はフネダコといって、アオイガイの主のカイダコとは別物だ、と、読める。
この辺りの理解は取材源の貝井春治郎さんはどう理解されていたのでしょうね?
細かいことながら、貝井さんですら、ひょっとしてコンガラガッテおいでなのではと思い
…もしそうなら、それだけ不可解な生き物だってことにもなるわけで、興味が尽きないわけですよ。
MANA 2005.10.14 どうも、たしかにこんがらがっているようですねえ。
わたし本人がかもしれませんが、いま、出かけるので、あとでゆっくりゆっくりと、整理しておきましょう。
千葉のみっちゃん 2005.10.14 カイダコの話、すごーく面白いです。毎日カイダコ検索で色々読んでますが、疑問は増えるばっかりです。
カイダコは、雌だけ貝をかぶってるらしいけど、産まれてすぐ貝を作り始めるのでしょうか?
貝から離れると死んでしまうと書いてあるけど、貝とタコは物理的にくっついているの?
それとも、貝なくしてもまた作るのでしょうか?
カイダコについて詳しいサイトを御存じでしたら、どなたか御紹介ください。
波平 2005.10.15 昨夜8時〜、NHKテレビ「鶴瓶の家族に乾杯」で五島列島を訪れる番組があって、なんと、カイダコが出てきてびっくりしました。泳いでいる映像もあった。
カイダコは、やはり貝蛸でしょうね。
二本の平たい脚は貝を立て向きに巻き込んでいて、いわゆるボート(この場合は貝)を漕ぐようなかっこうじゃなかった。櫂のようには見えなかった。

わたし、今年6月、自分の小さなプレジャーボートで2ヵ月半、西日本を独り旅しました。
五島列島には8日間滞在し、ほぼ全島を巡った。
この間に、五島列島の、宇久島・野崎島・若松島・日ノ島・有福島・福江島に上陸し、あちこちで竿を出した。
五島列島は、大小の島の集団です。
沿岸には無数の暗岩・洗岩が牙を剥く極めて危険な旅でした。
テレビに出た奈留島は、わたしが訪ねてカイダコの殻(アオイガイ)をもらった日ノ島からはおよそ10キロほど南西の位置にある島。
テレビ画面では穏やかな港に見えた奈留島港は、キツイ潮汐流が渦巻く狭い奈留瀬戸をくぐり入らねばならぬところ。
わたし、この瀬戸の詳細な海図を持ってなかった。
で、奈留島へは上陸しなかった。
テレビでは、前川清が黒島を訪れていた。五島列島には黒島という名の島が二つある。
ひとつは小値賀島の近くに、もうひとつは福江島の福江湾に。
彼が訪れたのは福江湾に浮かぶ島。
テレビは偶然にかみさんが観ていて、わたしに声掛けして、それで知って途中から観たが、懐かしくてたまらない。
カイダコですが、わたしがこれをもらった日ノ島も、テレビに出た奈留島も、五島列島の西岸にある。いわば黄海側だ。
通常では黒潮の支流は西岸側を流れている。
白浪@舞鶴 2005.10.15 > カイダコは、雌だけ貝をかぶってるらしいけど、産まれてすぐ貝を作り始めるのでしょ うか?
多分そうだと思います(あまり自信がないけど)

> 貝から離れると死んでしまうと書いてあるけど、貝とタコは物理的にくっついている
> の?それとも貝なくしてもまた作るのでしょうか?

貝とタコは物理的にはくっついてません.
定置網に入った生きたカイダコを逆さにして振ると中身だけ出てきます.
これを刺身にして酢味噌とかで食べるとけっこう乙なお味です(^^)
波平さんが櫂に見立てられたニ本の平たい足で貝殻を包むようにしていて,この足から炭酸カルシウムなどを分泌して貝殻を作っているような気がします.
貝殻の再生はたぶん無理でしょうねぇ
生理学のセンセに聞くと,貝(タコも貝の仲間)は貝殻を維持するためにかなり努力をしているのだそうです.
貝殻に比べて海水中のカルシウム濃度は何万分の一しかないので貝殻は常に溶けているのだそうで,それを補修しながら暮らしているとのことです.
海水よりもさらにカルシウム濃度が桁違いに低い淡水中に暮らす巻き貝では、大きくなると殻頂部が溶けて無くなってしまうのが普通.
取りあえず生活に関係ない部分は補修しないって感じです.
淡水の巻き貝を水槽で飼ってて水中のカルシウム濃度が下がったり,餌が不足すると貝殻がみるみるうちに溶けていきます.
白浪@舞鶴 2005.10.15 > 黒潮流域でカイダコがほとんど見られないのに、
> 俗説では南から流れて来ていることになっているようですね。
> 日本海一帯に広く普通に見られるカイダコが、もしも黒潮起源であれば、沖縄沿岸、
> そして九州、四国、本州の太平洋岸では見られないことはとても説明しにくいことです。

あれっ、沖縄沿岸にもいないのですか...ふ〜みゅ(?_?)
暖かな海で暮らす元気なヤツは、岸に漂着するようなドジな真似はしなってことでしょうかね.
黒潮のさらに外側の暖かい海が主な分布域ってのが常識的な線でしょうが.
東南アジアから中国南部のごく沿岸域が主分布域という可能性もありますね.
それだと黒潮流域にはあまり出現しないって事実とよく合う...
だいたい,あいつらって何年くらい生きるんでしょう.
殻の大きさの違いからすると,かなり長命かも知れませんね.
山口正士 2005.10.15 >> カイダコは、雌だけ貝をかぶってるらしいけど、産まれてすぐ貝を作り始めるのでしょ
>> うか?

> 多分そうだと思います(あまり自信がないけど)
繁殖するための貝殼ですから、赤ちゃんが母親になるまでの時間が必要です。
もしも、うまれてすぐ作るなら、ミニミニカイダコができるはずですが、ありますか。

> 貝殻の再生はたぶん無理でしょうねぇ
> 生理学のセンセに聞くと,貝(タコも貝の仲間)は貝殻を維持するために
> かなり努力をしているのだそうです.
> 貝殻に比べて海水中のカルシウム濃度は何万分の一しかないので貝殻は常に
> 溶けているのだそうで,それを補修しながら暮らしているとのことです.
> 海水よりもさらにカルシウム濃度が桁違いに低い淡水中に暮らす巻き貝では
> 大きくなると殻頂部が溶けて無くなってしまうのが普通.
> 取りあえず生活に関係ない部分は補修しないって感じです.
> 淡水の巻き貝を水槽で飼ってて水中のカルシウム濃度が下がったり,
> 餌が不足すると貝殻がみるみるうちに溶けていきます.

淡水と海水中とでは事情が全く違っていて、深海の低水温で高圧の場合を除き、
海水中のカルシウム濃度は過飽和になっています。サンゴの骨格や貝殼などの
炭酸カルシウムの結晶はほとんどエネルギーを使わずに沈着するという記述を
海洋化学の教科書で見ました。
カイダコは自分では生きているものを見たことがないのですが、たしか殻の壊れた部分の修復をやっているのではありませんか。
淡水環境が石灰にやさしくないことは指摘されたとおりです。
淡水中にも刺胞動物などがいますが、石灰質の殻を作りませんし、貝類なども苦労して殻皮などでガードして貝殻を維持していますね。
山口正士 2005.10.15 イカ、タコの生活史は卵から孵化した赤ちゃんが、浮遊性あるいはそれを省略してすぐ海底に着くパターンに分化していますね。
寒い海や深海、そして浮遊性のものについてはよくわかっていないのです。
想像だけで俗説が作られてきたようなので、私がちゃちゃを入れます。

> 黒潮のさらに外側の暖かい海が主な分布域ってのが常識的な線でしょうが.
それだったら、日本海に流されて入り込むチャンスはまずないでしょう。
黒潮は表層から数百メートルまでの深さまでガンガン流れていて、それをまたいで分散することに対して大変強力なバリヤーになっているのではなかろうか、と考えています。
海洋中の壁みたいに。
ただし、そこらじゅうで渦を巻いているし、低気圧で表面流ができたりして、場合によってまたいでいるかもしれません。

> 東南アジアから中国南部のごく沿岸域が主分布域という可能性もありますね
> それだと黒潮流域にはあまり出現しないって事実とよく合う...

中国大陸沿岸での出現状況を調べて見たいものです。
分布記録を調べてみると、出現が記録されている場所が、とても妙なことになっています。

> だいたい,あいつらって何年くらい生きるんでしょう.
> 殻の大きさの違いからすると,かなり長命かも知れませんね.

大多数のイカ、タコは1年で生涯を終えますので、カイダコが長命である可能性は低いのではないかな。
umigaeru 2005.10.15 > そこらじゅうで渦を巻いているし、低気圧で表面流ができたりして
> 場合によってまたいでいるかもしれません。

この効果は大きいと思います.
しかしながらよく分かっていませんね.
ある研究では,沿岸から黒潮域に流し出された卵稚子の生存率が予想に比べて高いのはこの効果と言われてます.
(黒潮前線の低気圧性渦による下層水の湧昇)
白浪@舞鶴 2005.10.15 > 繁殖するための貝殼ですから、赤ちゃんが母親になるまでの時間が必要です。
> もしも、うまれてすぐ作るなら、ミニミニカイダコができるはずですが、ありますか。

ふみゅ〜σ(^ ^;が実見した最小は5センチちょっとくらいですねぇ
でも,突然5センチのができるわけはないので、どのあたりから作り始めるのでしょう.

> 淡水と海水中とでは事情が全く違っていて、深海の低水温で高圧の場合を除き、
> 海水中のカルシウム濃度は過飽和になっています。サンゴの骨格や貝殼などの
> 炭酸カルシウムの結晶はほとんどエネルギーを使わずに沈着するという記述を
> 海洋化学の教科書で見ました。

え〜っと、教科書的にはそういわれてきたのですが....
最近の生理屋さんの話では,貝殻もかなりの頻度で中身が更新されてるのだそうで....ってσ(^ ^;はそちらはまるで素人なんで自信はありませぬが...
ただ,ヤドカリなんかは、かなりボロボロになるまで貝殻を使うので,海水中ではそう簡単には貝殻が溶けることはないような気がします。

> カイダコは自分では生きているものを見たことがないのですが、たしか殻の
> 壊れた部分の修復をやっているのではありませんか。

σ(^ ^;も修復された殻を見たことはありませんが,そういう報告はあるようです。
白浪@舞鶴 2005.10.15 >> 黒潮のさらに外側の暖かい海が主な分布域ってのが常識的な線でしょうが.
> それだったら、日本海に流されて入り込むチャンスはまずないでしょう。
そうですね.σ(^ ^;もそう思います.
ただ,コスモポリタン(世界中にいる)らしいので、どうかなぁと思った次第。

> 中国大陸沿岸での出現状況を調べて見たいものです。
> 分布記録を調べてみると、出現が記録されている場所が
> とても妙なことになっています。

そうなんですか.もう少し詳しく教えてくださいますかm(_ _)m

> 大多数のイカ、タコは1年で生涯を終えますので、カイダコが
> 長命である可能性は低いのではないかな。

そうなんですけどねぇ.
σ(^ ^;の手元にはほぼ同じ頃に採集した10センチ未満のから20センチオーバーまであって、これが同じ時期の発生群とは考えにくいモンで...
発生場所や時期の異なる個体が、たまたま同時に漂着したか、あるいは殻は産卵床なので短期間に急激に成長するから、大きさのばらつきが大きいとか...いろいろと考えることができそうですね。
波平 2005.10.15 また昨夜のNHKのテレビでの話しだけれど、カイダコは、オーストラリアの方から流れてくるようなことを言っていたと思う。
だれが、こんな情報を流したのでしょうね?
殻の修復は確かにやっているようですよ。
わたし、手元に持っている殻(アオイガイ)には、そのような痕跡が確かにあります。

タコってぇのは、ビックリするくらい早く大きくなります。
ひと潮過ぎれば見違えるように成長する。
貝がいくら大きくても、数年も生きていた結果だとは必ずしも言えないと思う。
タコの年齢はどこで計りますか?
ウロコは無いのだし、耳石なんかあるのかな〜?

〉暖かな海で暮らす元気なヤツは、 岸に漂着するようなドジな真似はしなってことでしょうかね.
⇒意外とそうかもしれませんなぁ〜、わたし、この説に興味がある。

> 中国大陸沿岸での出現状況を調べて見たいものです。
⇒沿岸といっても黄河や揚子江近くの、塩分濃度が極めて低いあたりは、タコにはダメなのではないでしょうか。
 また、タコは低温では生きれないから、このことも考えたい。
 わたしの、釣り師としての感覚からは、タコはアサリなどの餌がふんだんにあるあまり深くない海域で釣れます。
 最低塩分濃度が保持されていて、貝が、しっかり棲息しているあたりがタコの住み場みたい。
 カイダコの主食は何なのでしょうね。

全く関係ない話だけれど、タコの好物は蟹と海老みたいです。
蟹(カニ)だけど、ノミの夫婦ですよね。
カイダコもまたノミの夫婦らしい。なぜか似ている。
アオイガイはタマゴを育てるために必要なのだ、と、いうことらしいけれど、その前段階として、オス呼び寄せに一役かっているような気がする。
オス孔雀の羽じゃないけれど、なにせ貝が美しすぎる。
オスはこの貝を見て、ムラムラするのじゃないかな。誰かさんみたいに…。
白浪@舞鶴 2005.10.15 お二人のレスを拝見して,専門の方でも日本海って注目されてないんだなぁと,改めて(;_;)
σ(^ ^;がこないだ書いたのは,30年余り前に習ったことの受け売り
海洋学を講義してたKセンセは、日本海区水研から京大に来られたばかりだったので、対馬暖流の最新(当時の)情報として教わりました.
ばんどうさんが海洋学を教わった某センセは日本海にはまるで興味がない方なので,まぁ仕方ないのかもしれませぬ(/_;)
オホーツク暖流(夏の間,宗谷海峡を越えた対馬暖流がオホーツク海沿岸を流れる)も,その頃すでに,日本海の研究をしている人の間では常識でした.
こちらは,生物相の研究からそうでないとおかしいって話が先でしたが.

> また対馬海流自身も日本海内で沿岸流境界流以外の振る舞いも見せます.
> 全てが岸沿いに流れるのではなく沖合を流れる分枝もあるようです
っていうか,日本海の真ん中にある極前線(アムール川起源の低温低塩分水と対馬暖流水との境界)に沿って流れる沖合分枝と呼ばれる流れがたぶん対馬暖流の主流で,これが,うみガエルさんがおっしゃってた西岸境界流に相当します.
この流れに沿って,たとえばスルメイカの好漁場が形成されますし,カイダコやエチゼンクラゲなどもたぶんこちらの方にたくさんいるはずです.

本州に沿って流れる沿岸分枝の方は至って頼りない流れで、山口,島根の沖合を流れている間は,大陸棚の120m等深線に沿ってほぼ安定して流れますが,鳥取以西では大陸棚の幅がメッチャ狭くなることもあって(海底摩擦が効かなくなって),とても移ろいやすい流れになってしまいます.
私たちが若狭湾沖合で実測した感じでは,ほとんど日替わり定食状態.
前日には東向きにとうとうと流れていたところが、翌日には西向きに流れているなんて当たり前のように起こります.

海面気圧の分布と海上風が大きく影響(エクマン輸送が効く)しているので、平均すると,ほぼ5日くらいの周期(三寒四温ってヤツです)で変わりますが、実際のところは出港してみないと分からないので,漁業無線でも,漁師さんたちが「今日はどっちの潮やぁ」って情報交換している声が飛び交っています.
山口正士 2005.10.15 > そうですね.σ(^ ^;もそう思います.
> ただ,コスモポリタン(世界中にいる)らしいので、どうかなぁと思った次第

6種類いるとかですが、日本近海のものは専門家がきちんと調べているのでしょうかね。
沖縄沿岸のタコ類の調査を、わが方の大学院生がやってみた結果、過去の分類記載は全くなっていないことがわかって来ました。タコの分類は難題ですよ。

> そうなんですか.もう少し詳しく教えてくださいますかm(_ _)m
分類がおかしいのではないかと思われる分布状況ですねん。

> σ(^ ^;の手元にはほぼ同じ頃に採集した
> 10センチ未満のから20センチオーバーまであって
> これが同じ時期の発生群とは考えにくいモンで...

まったく同じコメントが、どこか別の海のペーパーノーチラスについて書かれていました。
しかし、コホート内でも個体の大きさが数倍違うなどということは、極めて普通にみられることですよ。
同じ親から生まれて、同じ環境で育ててみて、貝殼の大きさが何倍にも違うような結果がみられます。
たとえばナミノコガイでは、半年で成熟するものから2年かかるものまであって、同じ年齢で二倍以上の大きさの差が生じます。
個体変異の存在とその意義は重要だと思っています。

> 発生場所や時期の異なる個体がたまたま同時に漂着したか
> あるいは殻は産卵床なので短期間に急激に成長するから大きさのばらつきが大き
> いとか...いろいろと考えることができそうですね

さらに、同じ個体が成長しながら繰り返し産卵するかどうか、などの疑問が残ります。
umigaeru 2005.10.15 > お二人のレスを拝見して,専門の方でも日本海って注目されてないんだなぁ
> と,改めて(;_;)

それだけ難しいのでしょう。

> っていうか,日本海の真ん中にある極前線(アムール川起源の低温低塩分水と対
> 馬暖流水との境界)に沿って流れる沖合分枝と呼ばれる流れがたぶん対馬暖流の
> 主流で,これが,うみガエルさんがおっしゃってた西岸境界流に相当します.

沿岸境界流というのもあります.こちらは意外と新しい言葉かもしれません.
岸(日本側沿岸)に沿う流れです.
日本海側でも西岸強化は起きるのですかねぇ?(勉強不足で分からないですw)





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