秋刀魚の腹にウロコが入っているのはなぜだろう?
についてのの実証的解明
  その2

投稿された会員さん 投稿日 投稿内容
河原@キッチンラボラトリー@福山 1999.11.01 > こんにちは、Pinno小澤です。
こんにちは、サンマのおなかのウロコ、追試して下さってありがとうございます。
やはり、生のときには、消化管の外にはウロコが無いことが確認していただけてうれしかったです。

> > 今朝、市場で「サンマのうろこ」の話をしてたのですが、ウロコが内蔵に入って いるというのを知らない人が
> > いました。小沢さんの実験でも、入っているのと入ってないのとがありますね。
> > これは、何ででしょうか。 → 新たな疑問・・・(^_^;)(^-^)
> ウロコを飲み込む前にお亡くなりになったんじゃー・・・・?
私もそう思います。それに関して私の考えを少し。

 以前に、塩崎さんがレスして下さったように、サンマは、棒受け網という漁法で漁獲されます。
「北のさかなたち」(北日本海洋センター発行)によれば、集魚灯に寄せられたサンマを、船の片側の船べりに取り付けた網で文字通り一網打尽にすくうようにするのですが、サンマを船の魚倉に収納するには、タモ網ある
いは最近ではフィッシュポンプを使って取りあげるのだそうです。
 このことを、腹の中にウロコのあるサンマとないサンマがあることと関連づけて考えて見ましょう。

 棒受け網の中に入ってしまったサンマは当然パニック状態になり、お互いの体が接触し合うなどしてウロコがはがれ落ちると推測されますが、おそらく網内の海水中に漂うウロコの密度は、時間の経過と共に高まって行くでしょう。
 したがって、すぐにフィッシュポンプ等で取りあげられたサンマほどウロコを飲み込む確率が低いうちにお亡くなりになり、反対に、網の中に入ってから取り上げまでに長時間を要したサンマほど、ウロコでいっぱいの海の中でもがいて、ウロコを鱈腹飲み込んだ末に、お亡くなりになるのではないでしょうか。なんて考えてみました。

・・・ということは、ウロコがない個体の方が即殺状態でおいしいのかも?
でもこれは、実験するのは難しそうだな。

> 目黒のサンマや、佐藤春夫さんが食べたサンマはウロコが入ってなかったんで しょうね。
佐藤さんは、奥さん(でしたっけ、彼女でしたっけ)とられて、それどころじゃなかったでしょう。
「秋刀魚苦いかしょっぱいか・・・」で始まるあの詩は、泣けちゃいますね。

> 関係ないですが、サンマの学名はCololabis saira(コロラビス・サイラ) というらしいんですが、このサイラって
>何かわかりますか?
前述の「北のさかなたち」によれば、関西でのサンマの呼び名であるとのことです。
昔は、熊野灘では、まき網の一種で「サイラ網」というのがあったそうです。
これが学名になったのかな?  そう言えば、英語のsauryも語感がにているような・・・
河原@キッチンラボラトリー@福山 1999.11.01 > > 河原さんから、第2弾の実験報告がありましたら、この後に続ける予定です。
> プレッシャーですねぇ。
> とりあえず、熱を加えることによって、ウロコが胃壁を破って出てくるかは、確認したいと思います。
と、書いたものの、一般家庭でそうそう毎日サンマばかり食卓に出せず、ご報告が遅くなりました。
 おまけにお買い物したい年頃の娘に「サンマ買ってきて」と頼んだら、塩サンマを買ってきて、納得のいく実験設定(以下の実験1)ができず、先日ようやく鮮サンマで試験することができました(実験2)。では、実験結果をどうぞ。

<はじめに>
 サンマの腹の中のウロコは、生のときの解剖結果から、胃の中に存在すること が明らかとなった。
しかし、焼いたサンマを食べるとき、消化管の外にウロコが
あるというよう報告があった。
これを解明するために、「調理過程で消化管は
熱により収縮するが、消化管内部に充満したウロコはほとんど体積が変化しない ため、収縮した消化管壁は断裂し、内部のウロコが消化管の外に脱出する。」と いう仮説を立てて、それを実証する実験を行った。

<材料および方法>
実験1
 供試魚 福山市内のスーパーで購入した、塩サンマ1個体。産地不明。
 加熱方法 消化管を摘出後、アルミホイルのカップに載せ、上にアルミホイル をかぶせてからオーブントースター(         950W)で約3分加熱。その後の状態を観察 する。
実験2
 供試魚 福山市内のスーパーで購入した、鮮サンマ2個体。産地不明。
 加熱方法 消化管を摘出後、ざるに載せて流水下で、肝臓や脂肪、血液等を洗 浄し、鍋の中の熱湯(弱火で加熱        は継続)に約1分浸漬。熱湯中での変化、およ び、内容物の状態を観察する。

<結果>

実験1
 アルミカップの上にあったものは、ぐちゃぐちゃで何がなんだかわからない。
確かにウロコがあるし、外に出ているようにも見える。
が、どうして外に出てき
たのか、消化管の原形が判別できなくなっていたので、不明。
実験2
 1個体目は、生のときに観察した消化管の膨らみ具合や手触りから、内部にウ ロコがあることが予想された。
熱湯につけるとすぐに消化管は縮み、30秒ほどで
消化管前部に縦方向の断裂が観察された。
断裂部から、青灰色の小塊が現れた。
この小塊を箸で突き崩すと、およそ数十枚のウロコが鍋底に散らばった。
 2個体目は、生のときの消化管の外観から、ウロコがあるかどうかは不明であっ たが、1個体目と同様の手順で加熱したところ、断裂は生じなかった。
 加熱後、
消化管を開くと、内容物は乳白色の豆腐様を呈しており、ウロコはわずか2枚 が観察された。

<考察>

 ということで、実験2の1個体目は見事に胃が裂けて、興奮しちゃいました。
近くにいた娘に「証人になってね」と言ったのですが、怪訝そうな顔をしていま した。
 実験1では、材料が塩サンマで、消化管も汚れたままだったせいか焼き上がり が見苦しく、はっきり言って失敗でした。
 「焼く」ことにこだわっていたのですが、組織の崩壊が激しいのと、体内で加 熱されるのであれば、「煮る・蒸す・茹でる」方が現実を再現しやすいだろうと いうことで、リベンジ!! 実験2の加熱方法に切り替えました。
 実験2の2個体目で、ほとんどウロコが入って無いというサンマに出会えまし た。
 しかも、この個体の存在が対照実験の役割をしてくれて、ウロコがある→胃
が破れる。ウロコが無い→胃は破れない。という図式を示してくれたようです。
 また、胃から出てきたウロコのかたまりは、粘液状の胃内容物が「つなぎ」の 役目を果たしているらしく、加熱によって固められ、胃の外に出てもウロコのか たまりを形成していると予測されます。
 これで飲み込んだサンマのウロコが、消化管の外にある謎がわかったと言えな いでしょうか。
 私としては一応納得がいきました。


いゃ〜ここ数週間、サンマのウロコで遊ばして貰いました。どうもです。
 やはり、実験をして疑問を解くというのは、面白いです。
子供達の理系離れが今日のニュースでも言われていましたが、身近に「?」と思えることが、少なくなって来ているんじゃないでしょうかねぇ。
くりさん@横浜 1999.11.01 すばらしい実験でしたね。
行動力のある、若いお母さんに、お子さんは、目をパチクリですね。河原さんに座布団十枚!!!
管理人のコメント 1999.11.02 河原さんには頭が下がります。どうもありがとうございました。また、なんかあったら実験して下さいね。期待しております。



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