喜界島の正月料理

喜界島で農園を経営しておられる村山さんが、「島のお正月料理」について、投稿して下さいました。
私には、かなり珍しく興味深いものに思えましたので、Web化をお願いしましたら、快く了承して下さいました。
村山さんは、ご自分のホームページをお持ちです。  みちのしま農園

> 島の「お正月料理」、教えていただけませんか。  

ここの年末と正月料理は豚肉主体です、 なんせ明治以前から沖縄と同じように豚を食べていましたから。
もちろん、鳴き声以外は全部食べるというのは本当のことです。

喜界島は豚とは別に、ヤギも大好きです、これも鳴き声以外は全部食べます、 カラジューといって、臓物とヤギの血を使った料理は食べてみる価値があります。

沖縄は琉球王国が在りましたから宮廷料理のように豪華な正月料理がありますが こちらは素朴な料理です。
年末には豚のあばら骨とツワブキ、昆布、切り干し大根(千切りではない方)を味噌や醤油で味付けしたものが作られます。
鹿児島のとんこつとはちょっと違います。
私の神さんは千葉の出身なので、上手ではありませんが、母の手料理は私に合います。
こちらはあばら骨を大変好みますので、高い物は3000円/Kg近くもします(小売り) 昔は、各戸で黒豚(今の鹿児島黒豚のルーツ)を飼ってまして、それを年末に一斉に つぶすのです。その際に豚骨を作りました。

豚の屠殺方法はのどを包丁で刺すのです。その時にすごく切ない鳴き声をだします。 今おもえば、すごく大切な経験をしたものだと思います。 我々は他の命をいただいて生きているののだと思うのは私だけでしょうか? 
ともあれ、つぶした豚は塩漬けをして新年の糧として保存されます。

魚の方ですが、大海の中にあるにしては値段がすごく高いです。
南の海は魚種は豊富なんですが量はとれません。 魚屋さんに並ぶものは主に、カツオ、エラブチ(ブダイの仲間)、オキザワラ(2m近 いのがいます)、シビ(キハダマグロ)、それにハタの仲間が高級魚として、ムツ、 チビキ(ハマダイ)、キントキダイの仲間、フエフキダイの仲間、フエダイの仲間、 カンパチ、 等が刺身の材料として並びます。
魚ではありませんが、水イカの刺身は絶品です。
不思議にボラの類は下魚として、殆ど食べられません。 あれのノドチンコは美味しいんですけどね ! 鹿児島の本土では良く食べられているんですが、先日お寿司やさんが、 寿司ネタとして使われていることを見てびっくりしています。

正月料理としては、最近は本土化して色々な料理がでますが、昔からのものとしては 三献〈サンゴン〉といって、三つの膳がでます。
一つ目は、鰹節、昆布、椎茸(椎茸は奄美大島がルーツというのを最近知りました)で だしを取って中に、白身の魚、餅、蒲鉾、いも(島のいも)を入れます。味は醤油、 塩、味醂で整えます。
二つ目はお刺身で白身の魚が出ます。 生が無いときはしめサバに大根や人参のなますが出ます。
三つ目は、 豚肉か鳥肉のガラで取ったスープ(塩で味付け)に豚肉か鳥肉に、だいこん、にんにくの葉(方言でフル、ちなみに実の方はフルンガブ)、はるさめ、を入れた物が出ます。

魚の食べ方はそう多くはありません。なんといっても刺身でたべるのが、大好きです。
イュン(魚)味噌といって自家製の味噌に白身の魚を良く焼いてほぐし、混ぜ合わせます。食べるときに、好みに応じてさとうを少し混ぜ合わせます。お茶うけに最適です。
昔はトビウオやムロアジの薫製も造ったらしいですが、今は見かけません。
蒲鉾は揚げ蒲鉾です。
昔、海がきれいだった頃はウニ(バフンウニ?)がたくさん取れました。 生で食べるのも美味しいですが、塩から、味噌汁、卵焼き、玉子とじ、などが ふんだんに食べれました、残念ながらその頃はウニが大嫌いでした。
生のウニは浅い所(立ったままでとれる)にいますが、殻を割って食べるときに 上手に食べないと、口がかゅくなってしまうのです。
海草ではアオサ(ひとえぐさ?)、イギス、スノリ(もずく)、が今は主に食べられますが天然、養殖どちらもあります。

それから冬場の出来事で面白いことがたまに起きます。 先日、石垣島の方でもあったらしいですが、珊瑚礁のリーフ内では 冬の特別寒い時に、お魚さんが麻痺して海面に浮いてきます。最近は暖冬のせいか あまり聞きませんが、昔(生和30年代)沖永良部に住んでいた頃は、何度か目にしました。
波のまにまに、魚が漂っているのはなんとも言えない風情があります。 こういう時をヌサリ(運がいい)といいます。

釣りの好きな方もいらっしゃると思いますので南の島の変わった釣りを紹介します。  
ウィジクサビ(沖永良部の方言、ウィジは泳ぎながらの意、クサビはベラの類の方言)  つまり、泳ぎながらする釣りのことです。  
珊瑚礁のリーフ(環礁)の内側は安全で浅いので、昔の子どもたちは一日中、ウィ ジクサビをしているのもいました。  
メガネをかけて首に餌のヤドカリの身の入った袋をつけ、竿は竹竿の短いもの(長いと邪魔)を使います。
魚が釣れると魚のえらに、腰にさしたロープ(先に浮きが付けている)を通して貯めていきます。
魚は陸にあがった時に酢味噌で食べるか、 家へのお土産です。 今はウィジクサビをする人がいますかね?

> 喜界島は、雨が多いのですか。  

雨は、特に冬場はよく降ります、島唄にもひと月に35日雨が降ると唄われています。

上記の文章は、藤井ツユさんの島のジュウリ(料理)も参考にさせて頂きました。        



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