栽培漁業と養殖漁業

投稿された
会員名
投稿日 投稿内容
ナカジマ@
大潟村
2000.11.16 栽培漁業と養殖漁業というのはどう違うのでしょうか。  
基本的なことなのでしょうけれど、なにぶん素人でして。  
くりさん@横浜さまの水産雑学コラム(神奈川県の栽培漁業)に、『「栽培漁業」は有用魚介類の種苗を大量に生産し、中間育成を行ってから適地に放流して、それらが大きく育ってから漁獲しようとするものです。』とあったので、途中まで育てるのが栽培漁業で、最後まで育てるのが養殖なのかな?と思ったのですが。    
目的や利点、特性の違いなど、教えていただけると幸いです。
奈良近ハンブル 2000.11.17 >  栽培漁業と養殖漁業というのはどう違うのでしょうか。基本的なことなのでしょうけれど、なにぶん素人でして。
実は私もこの分野は専門ではなく、数年前の授業における記憶を書かせていただきます。
目的は「収穫物の増量」ということでだいたいは同じであると思います。
栽培漁業はある程度以上の成長を自然に任せ、すなわち
>  くりさん@横浜さまの水産雑学コラム(神奈川県の栽培漁業)に、 『「栽培漁業」は有用魚介類の種苗を大量に生産し、中間育成を行ってから適地に放流して、それらが大きく育ってから漁獲しようとするものです。』
くりさん@横浜さまのお書きになった内容のことであると思います。
あと、憚りながら加えさせていただきますと、放流場の環境造成や保全も含まれる、と記憶しています。
自然に任せる部分があるだけ自然淘汰もあるでしょうし、成長したもの全てを収穫できるとは限らないと思います。
でも品質は天然もの?(トラフグについては区別されるらしいですが) また単に「収穫物の増量」だけではなく、資源維持の目的もあると思います。
これもある意味で利点と言えないでしょうか。
養殖は自然の海水面や内水面を仕切って、徹底的に人間が世話をするような意味であったと思います。
最後の出荷まで面倒を見る分、ほとんどすべてを収穫できますね。
もちろん病死などの消耗もありますが。
あと記憶ちがいでなければ、栽培というカテゴリーの中に養殖が含まれるというのも聞いたことが。
あれっ?栽培ででなく増殖だったかな。
私もほぼ素人同然ですがダラダラと失礼しました。
でもここまで引っ掻き回すと、専門の方が出てきてくださると思うんですが・・
カニ@沖縄 2000.11.17 >  栽培漁業と養殖漁業というのはどう違うのでしょうか。基本的なことなのでしょうけれど、なにぶん素人でして。
手元にある本の冒頭「つくり育てる漁業の用語解説」を転載します。(一部省略)
(転載ここから)
  • 養殖は個人や企業体が一定の水域を占有し、その中で水産生物を商品サイズになるまで育て生産するもので、養殖物は当然その経営者のものになる。 増殖は天然水域で有用魚介類が減少した場合に、それらを回復あるいは維持するためにとられる手段や技法のことである。また、資源が減少していなくても現状以上に増産しようとする方策も増殖である。これは一般に漁協や公共団体などが行い、増産されたものは漁業者みんなのものとなる。 栽培漁業は有用水産生物を計画的につくり、計画的に採捕することで、この漁業政策の背景には、水産生物資源の減少を防止し積極的な再生産の拡大と助長をはかるという目的がある。狭い意味では、日本栽培漁業協会・都道府県・市町村などが実施している有用魚介類の種苗生産・分配・放流などの事業をさす。海洋牧場は栽培漁業に養殖の内容を加味した概念で、沿岸海域を牧場に見立て、そこで養殖と増殖のあらゆる技術を駆使して有用魚介類を増産し採捕する、と理解されている。
(転載ここまで)            「サンゴ礁域の増養殖」 諸喜田茂充 編著 緑書房
くりさん@横浜 2000.11.17 >  『「栽培漁業」は有用魚介類の種苗を大量に生産し、中間育成を行ってから適地に放流して、それらが大きく育ってから漁獲しようとするものです。 』とあったのでーーーー。
栽培は、上記の通りです。
魚種の全てではありませんが、海の生産力を利用して、成長させてから漁獲することでしょう。この場合は、無主物です。
養殖は、種苗の成長度合い(大きさ)には、いろいろありますが、商品価値の出る大きさまで、専用の水面(主として、網の中とか、囲いの中など)で、飼育することでしょう。 この場合は、所有者が特定しています。
このようなところで、ひとまず如何でしょうか。
海童 2000.11.18 養殖漁業と栽培漁業についてはすでに皆様がご説明されてますので。
(むりやり、付け足し・・・)
増殖(事業)では漁業管理、(移植)放流、環境改善などの対策が講じられると思います。
栽培漁業は、とくに漁業管理下で放流効果を狙ったものなんでしょうね。
アワビやウニなどの栽培漁業では、さらに藻場造成などの積極的な環境改善を必要とするかも。
アワビの密漁、許せへんで!!!
河原@福山 2000.11.18 栽培漁業に関しては、今年の春に五島から、さらに九五島増えたところ (五+九五=?島)に転勤してこられた、適任者の方がいらっしゃるのですが・・・。どうでしょうか>崎山さん。  
わたしは、アワビを通じて、栽培漁業と養殖に関わってきた立場でお話しさせていただきます。  
栽培漁業は、大きく「タネづくり」と「畑づくり」に分けられます。
タネづくりは、各地の栽培漁業センターでおこなわれている、種苗生産を指します。 
畑づくりは、タネを放流するために適した場所を用意することです。  
「タネづくり」の必要性は、自然界で起こる「初期減耗」を人間が世話をすることで極力回避し、なるべく効率良く稚魚を生産し、害敵におそわれにくくなるまで世話することにあります。  
その後は、自然の生産力に任せるというわけですが、餌もないようなところに放流しても死んでしまうので、隠れ家や餌にありつける環境を準備することが「畑づくり」です。  
養殖については、タネづくりの延長、あるいは天然から稚魚を得て、商品まで仕立てるということは、皆様のおっしゃるとおりです。  
わたしは、養殖は栽培漁業には含まれなかったと記憶していますが、どうでしょう。
漁業白書では、両者を併せて「つくり育てる漁業」と表現しています。  
以下はちょっと読みにくいかもしれませんが、自分が岩手県でやらせていただいたことと関連づけて・・・・。  
わたしが、アワビ養殖にかかわっていたのは、「早く成長する養殖用アワビができないか?」という要望に応えるためのものだったのですが、その際に、栽培漁業の持つ特性を利用しました。  
種苗生産は、大量の種苗をマニュアル化された方法で生産しますから、同じ生産ロット内の子ども達の成長の差は、環境による差よりも、遺伝的な違い(=持って生まれた能力の差)によってもたらされると考えられます。
従って、種苗生産施設で出現した特に成長の良いものを親とすれば、成長の良い血筋を作れるのではないかと試験していました。
いわ ゆる選抜育種ですが、選抜されるベースが大きければ大きいほど良いものが出現する可能性も高くなるのです。  
栽培漁業(放流)に用いる親に、このような特別な性質を持ったものばかりを使うのは不適切ですが、養殖であれば品種(遺伝的な偏り)として利用できるので、栽培漁業は「効率的な養殖」の出発点となると考えられます。  
以上のことは、昨年の秋の水産学会(仙台)の増殖懇話会で講演した一部ですが、講演後に東水大の先生に、発表で用いた図表のコピーがほ しいと言われたときは正直うれしかったです(^。^)v。
でも、選抜育種の仕事は「子どもの善し悪しは、親の善し悪し」ということを思い知らされ、一種あきらめの境地に似たものを感じました。
ナカジマ@
大潟村
2000.11.18 「養殖」と「栽培」何となくですが、違いが分かってきました。  
育てる過程の違いの他に、誰のモノなのか、と言う違いもあるのですね。  
考えてみれば、育てた人が捕るのは当然ですよね。   

> 放流場の環境造成や保全も含まれる、と記憶しています。
> 栽培漁業は、大きく「タネづくり」と「畑づくり」に分けられます。アワビやウニなどの栽培漁業ではさらに藻場造成などの積極的な環境改善を必要とするかも。  
この一連の説明で「海藻の森」とのつながりがようやく見えました。  
実は関連づけて考えた上での質問では、全然なかったのでした・・・。  
沿岸域の環境が悪化していそうな昨今、「畑づくり」は漁業という観点以外からも利点といえるのかもしれないですね。

> 「サンゴ礁域の増養殖」 諸喜田茂充 編著 緑書房  
検索したところ、残念ながらこの本は秋田の図書館には入っていませんでした(県、市、大学とも)。
何を読めば分かるのだろうと、悩んでいたので大変有り難かったのですが。  
資源何とかとか、他に何冊かそれらしきタイトルのものがあったので、とりあえず、そちらを当たってみます。

>  わたしが、アワビ養殖にかかわっていたのは、「早く成長する養殖用アワビができないか?」という要望に応えるためのものだったのですが、その際に、栽培漁業の持つ特性を利用しました。  
再度の質問になって申し訳ないのですが、私の理解力と勉強が足りなくて (熱のせいかも・・・何て、言い訳したりして)、「栽培漁業の持つ特性」を示しているのがどの部分に当たるのか分からなかったので、良ければ教えていただないでしょうか。

> でも品質は天然もの?(トラフグについては区別されるらしいですが)  
トラフグはどうやって天然と栽培を区別するのでしょうね?  
不思議です。違いが出るのかなぁ・・・。  
養殖よりも栽培の方が何となくイメージとして健康的?なんて、思ってしまいました。
奈良近ハンブル 2000.11.20 >  トラフグはどうやって天然と栽培を区別するのでしょうね?不思議です。違いが出るのかなぁ・。
フグの場合これ放流フグと言います。
下関の唐戸水産の方が食べ比べしたのを本で読んだことがあります。
その方々の評価は 「限りなく天然に近い」だそうです。 って、どんなんでしょう?
市場における評価は、 山口県内海栽培センターの資料によりますと、 (コピーはあるのですが冊子の題名と発行年度がわかりません。) 天然ものの6〜7割だそうです。
これを見た目でどう区別するのか。 ポイントは尾鰭だそうです。
養殖トラフグは、ストレスからくる噛み合いをします。
放流されるトラフグは約5cmぐらいだそうで、 (6mmの時点ですでに噛み合いするそうです。) その時点ですでに尾鰭が欠損しており、 成長し漁獲されたときも尾鰭がきれいにそろってないそうです。
しかしちょっと曖昧な部分もあります。
中間育成期に欠損しても多少回復するそうですし、 純粋な天然ものでも何かの事故で尾鰭を欠損すれば放流もの扱いされる。 という事になるのではと思います。
あくまで私の考えですが、 この場合における天然、放流の区別は実際ランクづけで、このどちらかというよりも、無傷なものかどうかがポイントになるのでは? と思います。
天然トラフグのように高級なものになると、見た目も大事になるのではと。 どうでしょう?
ほかの天然と養殖の見分け方も聞いた事有るのですが、 わすれてしまいました。すみません。
昨日、パックのサバフグで粕汁作ったら、 サバフグ自体も塩辛くて難儀した奈良近ハンブル。
(中国産だったけど、塩漬けで輸入するのでしょうか。)
河原@福山 2000.11.21 > ところで、アワビの選抜は、どこまで進んでいるのでしょう。簡単で結構ですので、さわりを教えてください。  
私が試験用親貝を提供依頼していた頃(平成4年)には、各地の種苗生産施設の担当者が個人的な興味で成長優良個体をキープし、交配しているというのが実情でしたが、現在でもあまり積極的に取り組まれてはいないのでは無いかと思います。  
種苗生産の目的の大半が放流(公共事業)であること、放流事業と育種が相容れないことを考えれば、あまり進展しないのも理解はできます。
でも、杓子定規になわばりに固執しているのも、考え物ですよね。  
種苗生産機関のほとんどが、民間((社)とか(財)とかはつきますが)になっている現状を考えれば、養殖用種苗の供給ルートも増えてくると思います。
そうなれば、育種も進むと思います。  
実際、マダイの養殖用種苗を作っている民間企業では、育種による改良がビジネスに直結しています。(前にも書いたかな?)  
エゾアワビでは成熟するまでに3年ぐらいかかるものの、1世代の子どもの数が多いので、子どもの集団(兄弟)の上位を選択する場合に、かなりシビアな選択が可能です。
試験結果では2〜3世代の継代選抜で、選抜していないものより、 殻長で1.3倍、体重で、1.8倍ぐらいの効果が見られました(ただし、陸上水槽での試験ですから、即養殖に応用できるかは疑問です。後任の人が現場での実証試験を継続しています。)。  
平たくいえば、3人兄弟で一番大きい子どもを選んだ場合と、10人の兄弟の中から一番大きい子どもを選んだ場合では、後者のほうが大きくなる遺伝的要素を多く持っている可能性が高いということです。
成長優良に関係する遺伝子はひとつでは無いでしょうから。
そこが、多産である水産物の育種における有利な点と考えられます。

>  再度の質問になって申し訳ないのですが、私の理解力と勉強が足りなくて (熱のせいかも・・・何て、言い訳したりして)、「栽培漁業の持つ特性」を示しているのがどの部分に当たるのか分からなかったので、良ければ教えていただないでしょうか。
いえいえ、舌足らずですみません。  
栽培漁業を進める上で、各地に種苗生産施設が建設されています。
タネづくり=種苗生産で生じた「おいしいところ」を選抜育種に利用するということで、その下の文章につなげたつもりなんですが。
このレスの前半の文章ともつながっていますので併せて読んで見てください。
あまり長くないので、引用させていただきます。
>  種苗生産は、大量の種苗をマニュアル化された方法で生産しますから、同じ生産ロット内の子ども達の成長の差は、環境による差よりも、遺伝的な違い(=持って生まれた能力の差)によってもたらされると考えられます。従って、種苗生産施設で出現した特に成長の良いものを親とすれば、成長の良い血筋を作れるのではないかと試験していました。いわゆる選抜育種ですが、選抜されるベースが大きければ大きいほど良いものが出現する可能性も高くなるのです。
字だけで説明というのも難しいもので・・・(弱音^^;)。
お時間がありましたら、下のアドレスにアクセスして見てください。
拙文(平成11年度水産増殖懇話会要旨)と図を見ることができます。        
   http://ww4.tiki.ne.jp/~ikawahara/abstractSep1999.htm
文章(ちょっとわかりにくい?)の下に「栽培漁業と育種、養殖の関係を示す図」 をリンクさせてありますから、ご参考までに。
ナカジマ@
大潟村
2000.11.22 >  種苗生産の目的の大半が放流(公共事業)であること、放流事業と育種が相容れないことを考えれば、あまり進展しないのも理解はできます。でも、杓子定規になわばりに固執しているのも、考え物ですよね。  
種苗生産と育種と目的が別物だったのですね。  
何となく概要が掴めてきた気がします(余り自信がないのですが)。

> 「栽培漁業と育種、養殖の関係を示す図」  
この図がとてもわかりやすかったです。  
近所の人々と『多様性セミナー』という勉強会を月一で行っています。  
今度、聞きかじりの知識で秋田の栽培漁業のことを発表しようと思っているのですが、その際にこの図を引用させていただけると有り難いのですが、構いませんでしょうか?
ナカジマ@
大潟村
2000.11.22 > ポイントは尾鰭だそうです。養殖トラフグはストレスからくる噛み合いをします。放流されるトラフグは約5cmぐらいだそうで、(6mmの時点ですでに噛み合いするそうです。)その時点ですでに尾鰭が欠損しており、成長し漁獲されたときも尾鰭がきれいにそろってないそうです。 しかしちょっと曖昧な部分もあります。中間育成期に欠損しても多少回復するそうですし、純粋な天然ものでも何かの事故で尾鰭を欠損すれば放流もの扱いされる。という事になるのではと思います。  
成る程ですねぇ。それにしても6mmで噛み合いは驚きです。  
フグは気が荒いのでしょうか。
以前クサフグを素手で捕まえようとしたときに指を囓られ、暫く菱形の歯形が残っていました。  
ヒレで思い出しましたが、アユやヤマメ、イワナといった淡水魚も、放流モノはヒレの大きさが違うとか聞いたことがありました。
天然の方が遊泳力を必要とするためにヒレがでっかいとか。
魚体も、放流モノの方がぽっちゃりしてるとか(ホントかな)。
アユのことは漫画「美味しんぼ」で読んだような気がします。  

> あくまで私の考えですが、この場合における天然、放流の区別は実際ランクづけで、このどちらかというよりも、無傷なものかどうかがポイントになるのでは?と思います。天然トラフグのように高級なものになると見た目も大事になるのではと。 どうでしょう?  
私のような高級魚に縁のない人間には、見当もつきませんのぅ。  
(グラム100円以上の魚は滅多に買いません・・・、ケチんぼ主婦ですの で)。  
料理人の方々ならご存じかも知れませんね。
河原@福山 2000.11.23 >  種苗生産と育種と目的が別物だったのですね。
そのとーり! ついでに「生物生産」の歴史を振り返ってみましょう。
  【農業】採集→栽培→育種
  【畜産】狩猟→牧畜→育種
  【水産】漁撈⇔栽培
    ↓   ↓    
   養殖1 養殖2→育種  

ここで特筆すべきは、水産養殖は、子どもを天然から採取してきて大きく育てるものがまだまだある(上記養殖1)こと、たとえばウナギ、ハマチなど。  
しかし、これらの魚種は技術開発は進められているものの、大量に種苗生産するのが困難、つまり特定の親から子供を作ることができないため、現状では育種への進展があまり見込めないと言えます。  
ところが、栽培漁業対象種となって繁殖技術が確立される(養殖2)と、優れた親を選んで子どもを作ることが比較的容易にできます。これが育種のはじまりです。  
従って、目的は異なるものの、栽培漁業が無くては育種へ進展することは難しいと考えられますし、栽培漁業のそのような潜在的な可能性を、「多様性の維持」 にばかり目を向けて、手を着けないでいるのも宝の持ち腐れと言えないでしょうか?  

> 「栽培漁業と育種、養殖の関係を示す図」
>  この図がとてもわかりやすかったです。近所の人々と『多様性セミナー』という勉強会を月一で行っています。今度、聞きかじりの知識で秋田の栽培漁業のことを発表しようと思っているのですが、その際にこの図を引用させていただけると有り難いのですが、構いませんでしょうか?
うっうっうれしいです。
この図は、河原の「渾身の一枚」(ちと大げさですな)ですので、是非ご利用ください。
できれば、HPのアドレスをちょこっと記載して貰えれば、なおうれしいです。
ナカジマ@
大潟村
2000.11.25 > 従って、目的は異なるものの、栽培漁業が無くては育種へ進展することは難しいと考えられますし、栽培漁業のそのような潜在的な可能性を、、「多様性の維持」にばかり目を向けて、手を着けないでいるのも宝の持ち腐れと言えないでしょうか?  
またしても質問になってしまいます。(何度もスミマセン、なんせ理解がのろくて)  
『「多様性の維持」にばかり目を向けて、手を着けない』 というところでひっかかってしまいました。  
「多様性の維持」にばかり目を向けていることが、育種にとって、どのように弊害になっているのでしょう。  
自然界に放流する魚たちは、いろんな遺伝子を持っていなければならないから、栽培サイドはわざわざ優良個体を選抜して育てるなんてことはやらないよ〜、というようなことなのでしょうか?   
河原さんがおっしゃるのは、栽培漁業で開発したものを、もっと育種に活用すべき、ということでしょうか?  
業界内の事情は存じませんが、栽培と育種の垣根を低くして、栽培−「こんな子居るけど、どう?」  育種−「あ〜、もらっとくわ。」 というカンジにすれば、より有効に養殖ができる、ということなのでしょうか。  
何か、例え方が、バカっぽいのですけれど・・・。

> 是非ご利用ください。できれば、HPのアドレスをちょこっと記載 して貰えればなおうれしいです。
有り難うございます。勿論HPアドレスも載っけさせていただきます。  
個人的には、『えぎょろじー』がアップされるのを楽しみにしております。

> それにしてもアカデミックなご近所ですなぁ。恐れ入りました。
私以外は皆さん研究者の端くれ(失礼!)の方々です。  
私は垢出みっくな野次馬と言うところでしょうか。 (・・・しつれーしました)。  
農学関係者ばかりなので、果たしてどんな意見が出ますやら(しかも私の発表だし)。
海童 2000.11.25 > 私以外は皆さん研究者の端くれ(失礼!)の方々です。
男鹿にある、県水産振興センター(でしたよね?)とはお付き合いされてないのでしょうか?
ナカジマ@大潟村 2000.11.25 アルバイトがある時のみ呼び出されて出向いています。  
あとは時折、ダンナの雑用でお使いに行ったりする程度です。
海童 2000.11.27 そうですか。お付き合いがあるということですね。
そこの職員の皆さんとは、水産生物の増養殖や多様性の話しはされないのでしょうか。
ところで、ちょうどこの時期、男鹿にはチヌ釣りに出かけていたことがあります。
食べきれないほどの料理が出る(有名な)民宿に泊まって、とくにブリコ(ハタハタの卵)を食べるのを楽しみにしていました。
食べるのとは別で、実験でハタハタの卵からある成分を取り出したくて、水産振興センターさんから分けてもらったことがあります。
今でも、ハタハタの種苗生産はされているのでしょうか?
河原@福山 2000.11.28 >  「多様性の維持」にばかり目を向けていることが、育種にとってどのように弊害になっているのでしょう。
弊害という言葉は使ってなかったと思いますが・・・・。
手を着けないのは「もったいない」ぐらいの感じです。

>  自然界に放流する魚たちはいろんな遺伝子を持っていなければならないから、栽培サイドはわざわざ優良個体を選抜して育てるなんてことはやらないよ〜、というようなことなのでしょうか? 
種苗生産する上で、遺伝的なバリエーションを損なわないためには、親を何個体使えばよいかなどという指針(確かFAO)も出されています。

>  河原さんがおっしゃるのは栽培漁業で開発したものを、もっと育種に活用すべき、ということでしょうか?業界内の事情は存じませんが、栽培と育種の垣根を低くして、栽培−「こんな子居るけど、どう?」 育種−「あ〜、もらっとくわ。」というカンジにすれば、より有効に養殖ができる、ということなのでしょうか。
そうです。育種は、利益に直結しますから、公共的な栽培との垣根は高いだろうと思います。
農業では、「タネや」さんがビジネスになってますよね。
それ以外にも、企業で開発した肥料や、農薬などを公的機関が試験したり評価することが当然になっているような気がする(部外者なので、内情はどうかはっきりわからない)のですが、水産では企業の開発したものを公的機関が試験(評価)するには腰が引けているように感じるのですが、そう感じるのは私だけかな?
加工部門では、企業との関係は深いのですけれどねぇ。
話は変わって、
>  勿論HPアドレスも載っけさせていただきます。個人的には『えぎょろじー』がアップされるのを楽しみにしております。
私の未公開ページの『egyology』のコンセプトは、
「あなたの食べた牛肉が、あなたの体を通過して、再び牛になる日は来るか? あなたの食べたおさかなは、あなたの体を通過して、再び海の幸になる。」
人間が、物質循環に組み込まれているのを体感できるのはやっぱり魚食です。

>  農学関係者ばかりなので、果たしてどんな意見が出ますやら(しかも私の発表だし)。
農学関係者であれば、育種に関するコメントはたっぷりいただけるでしょう。
水産の育種が遅れているのは、水生生物の人工繁殖・飼育の難しさ(特に海産)が、まず第一であることをお忘れ無く。
金魚や、錦鯉など観賞魚の育種は進んで るよ!
ナカジマ@大潟村 2000.11.28 > とくにブリコ(ハタハタの卵)を食べるのを楽しみにしていました。  
秋田県にいながらほとんどハタハタを食べたことがなく、有名な民宿にも縁がありませんので、聞いたことがあるのは「磯○家」位です・・・。  
秋田の人もブリコが好きみたいですね。  
ブリコといいジュンサイといいミズといい、秋田県人はねばねばぬるぬるぷりぷりした食べ物が好きなのかもしれない、と勝手に思っています。  

> 食べるのとは別で、実験でハタハタの卵からある成分を取り出したくて、水産振興センターさんから分けてもらったことがあります。今でも、ハタハタの種苗生産はされているのでしょうか?  
事業がいつまで続くのかは存じませんが、センターでは今のところ種苗生産と放流は行われているようです。
日本栽培漁協協会能登島事業場というところとの共同研究も行っているらしいので、そこにも卵塊を送っているようです。
海童 2000.11.28 >聞いたことがあるのは「磯○家」位です・・・。
ここです。ご主人は「水産出身」だそうです。

>  ブリコといいジュンサイといいミズといい、秋田県人はねばねばぬるぬるぷりぷりした > 食べ物が好きなのかもしれない、と勝手に思っています。
ハタハタ種苗生産の件、ありがとうございました。
安倍@秋田 2000.11.29 >  ブリコといいジュンサイといいミズといい、秋田県人はねばねばぬるぬるぷりぷりした > 食べ物が好きなのかもしれない、と勝手に思っています。
そうだと思いますよ。 歯ごたえと粘り物は好きですね。
海草で言えば「ギバサ」「根カブ」は時期になると必ず食べるし・・・ でも、鰰のブリコは秋田の人にとって無くては成らない季節物じゃないですかね?
鰰好きでも、ブリコよりは白子と言う人も多いですが、12月1度は必ず、ブリコ鰰食べなきゃ年越せないって食べますもんね(^^;;;
それと、正月のブリコ鰰の1匹すし!
単なる粘り物、食感好きだけでは言い表せない土着の嗜好品ですかね? そ
れにしても、今年は鰰不漁だ・・・(T^T)
ナカジマ@大潟村 2000.12.03 河原さま、返信が遅くなりましたが、先日、何とか発表を終えました。  
質問の嵐にお答えいただき有り難うございました。  
結局発表は、ハタハタの栽培漁業に関した内容になりました。

> 弊害という言葉は使ってなかったと思いますが・・・・。手を着けないのは「もったいない」ぐらいの感じです。  
「弊害」という言葉を使ったのは、私が大袈裟に捉えてしまっていたせいです。
現実で、ずいぶん問題になっているのかなぁ、と思い込んでいたので。すみません。  

> 育種は、利益に直結しますから、公共的な栽培との垣根は高いだろうと思います。
垣根の高さは、養殖をする人の経営規模に関係するのではないかという意見を貰いまし た。  
漁業は天然の魚を捕る人の方が多いから、規模の小さい養殖に税金を投入することがためらわれるのではないかと。(みなさん推測の域を出ないけど、と、いう前置きつきでしたけど)    
それと、緊急性があればするのかも、ホントに居なくなったらするのではないか、とか (居なくなったら出来ないでしょ!とか言われてましたけど)、付加価値(“環境”の名の付くような)が付いたら、公的資金を投入しようということになるかも、とか。    
あと、一匹一匹の味がはっきり違う、とわかれば、育てようと言う気になるかもしれないけど、それが分かる人が居ないとか、という意見もありました。
天然魚の味の違いは った場所で違うというのは聞きますけど、養殖では余り聞いたことがありません(私に限ってですが)。  
そういえば、農作物は味の違いを一所懸命機械で測ろうとしたりしてますね。

> 水産の育種が遅れているのは、水生生物の人工繁殖・飼育の難しさ(特に海産)が、まず第一であることをお忘れ無く。金魚や、錦鯉など観賞魚の育種は進んでるよ!  
あ、たしか以前このMLで、世界で一番養殖されている量が多いのは鯉類という投稿がありましたよね。
鯉なんてそんなに食べるのかなぁ、と思っていたのですが、食べるだけではなく観賞用もあるのですね。それで養殖量が多いのかな。  
まだまだ、栽培漁業入門というところなので、上手く問題提起もできなかったのですが、 今後も気にしていようと思います。いろいろとご教示有り難うございました。  
そのくみさんが書かれていましたが、全漁連さんのホームページの「おしえてお魚」 は、確かにわかりやすかったです。もっと前に見ておけば良かった。  

> 人間が物質循環に組み込まれているのを体感できるのはやっぱり魚食です。  
初めて気付きました。確かに、魚の方が分かりやすいですね。  
私には“水”を介しているという点で体感できるような気がします。
琵琶湖
オオナマズ
2000.12.03 > 鯉なんてそんなに食べるのかなぁ、と思っていたのですが、食べるだけではなく観賞用もあるのですね。それで養殖量が多いのかな。
日本国内では観賞魚としていますが、食用としての養殖が多いのは中国です。
日本では、養殖魚と言えば、一般的には「アユ」「ウナギ」「ニジマス」等の淡水魚だけでなく、「タイ」「ブリ(ハマチ)」「フグ」などの海水魚も思い浮かべますが、中国では淡水魚の養殖が圧倒的に多く、その中でも鯉類が多いのです。
河原@福山 2000.12.05 >  漁業は天然の魚を捕る人の方が多いから、規模の小さい養殖に税金を投入することがためらわれるのではないかと。(みなさん推測の域を出ないけど、と、いう前置きつきでしたけど)  
水産庁の「養殖研究所」というところが、三重にあります(OBの方もここにい らっしゃいますね)。
新入研究員は、養殖漁家のところで実地研修をするらしいですが、そういうのってとても大切だなと思いますね。
現場で使える研究をしてもらわないと、税金が研究者個人の業績を高めるために使われてしまう。 #いけない、また書きにくいことを平気で書いてしまった。

>  それと、緊急性があればするのかも、ホントに居なくなったらするのではないか、とか(居なくなったら出来ないでしょ!とか言われてましたけど) 結構、それに近いところまで来ているような・・。
マダイなんて養殖のほうが 断然多いのでは?

>付加価値(“環境”の名の付くような)が付いたら、公的資金を投入しようということになるかも、とか。
魚のエコラベル。考えてるらしいですよ。  

>  あと、一匹一匹の味がはっきり違う、とわかれば、育てようと言う気になるかもしれないけど、それが分かる人が居ないとか、という意見もありました。天然魚の味の違いは、育った場所で違うというのは聞きますけど、養殖では余り聞いたことがありません(私に限ってですが)。そういえば農作物は味の違いを一所懸命機械で測ろうとしたりしてますね。
これが結構、水産育種の進まない理由のひとつ。
牛、豚、鶏に比べて種類が多い、だから育種目標は、今のところ、「成長が速い」 「病気にかかりにくい」などの、育てるのに都合の良い形質がえらばれやすいです。

>  そのくみさんが書かれていましたが、全漁連さんのホームページの「おしえてお魚」は、確かにわかりやすかったです。もっと前に見ておけば良かった。
インターネットの力を感じますね。
全漁連さんのホームページの中で私が注目してるのは、全漁婦連のページ、まだ工事中のページが多いですが、こういうペー ジが作られているのも、「男女共同参画社会基本法」が昨年できたせいかな、なんて思ってます。
ナカジマ@大潟村 2000.12.05 > 日本では、養殖魚と言えば、一般的には「アユ」「ウナギ」「ニジマス」等の淡水魚だけでなく、「タイ」「ブリ(ハマチ)」「フグ」などの海水魚も思い浮かべますが、中国では淡水魚の養殖が圧倒的に多く、その中でも鯉類が多いのです。  
成る程、中国ですか。  
このレスを頂いてから、あちこち、アジアの養殖についてのページを探していたのですが、中国についてのものは見つけられませんでした。  
中国というと何故かナマズのイメージが大きかったのですが、今度からは鯉を気にしてみます。
琵琶湖オオナマズ 2000.12.05 > そういうのってとても大切だなと思いますね。現場で使える研究をしてもらわないと、税金が研究者個人の業績を高めるために使われてしまう。#いけない、また書きにくいことを平気で書いてしまった。
これは、非常に大事なことだと思います。
研究者の方が、生産の現場を知って頂くことと同時に、流通や消費の現場をも知った上で、研究していただきたいと思いますね。

> マダイなんて養殖のほうが > 断然多いのでは?
そうでしょうね。 うちなどは、天然鯛と養殖鯛では、取扱量に二桁の差がありますよ。

> 全漁連さんのホームページの中で私が注目してるのは、全漁婦連のページ、まだ工事中のページが多いですが、こういうページが作られているのも、「男女共同参画社会基本法」が昨年できたせいかな、なんて思ってます。
能力を持ちながらも、結婚・出産という過程のなかで、やむなく家庭に入り、持っている能力を発揮できない状況におかれていく女性の方を、何人も見てきました。
これは、当然、ご本人にとっても残念な事であるし、社会的にも損失だと思っています。
女性が、結婚して、子供を持っても働き続けることができる社会を、早く実現したいものですね。
ナカジマ@大潟村 2000.12.09 > 新入研究員は、養殖漁家のところで実地研修をするらしいですが、そういうのってとても大切だなと思いますね。現場で使える研究をしてもらわないと、税金が研究者個人の業績を高めるために使われてしまう。
> #いけない、また書きにくいことを平気で書いてしまった。  
水産分野に限らないみたいですね。研究(業績)のための研究とか。  
生き物を扱う人達(これに限らないかも知れませんが)は、そんなに早く結果なんて出せるものでもないと思うのですが、とにかく業績を上げなきゃクビが危ない、だから業績を上げなきゃ・・・、というジレンマがあるのではないかなぁ、と、他人事ながら思ってしまいます。  
琵琶湖オオナマズさんもおっしゃっていましたが、やはり研究結果は社会に還元して欲しいです。

> うちなどは、天然鯛と養殖鯛では、取扱量に二桁の差がありますよ。  
う〜む、そうだったのですか。  

> 魚のエコラベル。考えてるらしいですよ。  
養殖モノなら出来そうですね。  肉類みたいに。

> これが結構、水産育種の進まない理由のひとつ。牛、豚、鶏に比べて種類が多い、だから育種目標は、今のところ、「成長が速い」 「病気にかかりにくい」などの、育てるのに都合の良い形質がえらばれやすいです。  
成る程。育て易さが、まず第一なのですね。

> インターネットの力を感じますね。全漁連さんのホームページの中で私が注目してるのは、全漁婦連のページ、まだ工事中のページが多いですが、こういうページが作られているのも、「男女共同参画社会基本法」が昨年できたせいかな、なんて思ってます。  
男女共同参画云々には全く関係ないのですが、全漁婦連の綱領にあった「漁村婦人」という表記をみて、「漁」をする人達が住んでいるのは「村」が多いのかなぁ・・・と、ふと、考えてしまいました。
何だか、漁が主体の自治体というのは、「村」規模でしかないのかなぁ、などと想像を巡らしてしまいます。



Copyright(C) nov.20,2000 by Toshio Yabe. All rights reserved