本マグロの酸味orヤケについて

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下田@新入り&東京都町屋 2006.11.17 以前のスレッドに「本マグロの酸味」というのがございましたので、きっとお分かりになる方がいらっしゃるのではと思い、皆様におたずねします。
 fishml過去ログ 「本マグロの酸味について」

先日、以下のやり取りを傍らで聞いておりました。
A「あのマグロは酸味が強くてメジみたいな感じだったなあ。」
B「それはまだ新しいからで、もう1日くらい経つと甘みが出てくるよ。」

そこで二つ疑問です。
1.マグロの酸味といのは、メジほど強くて魚体が大きくなると酸味が薄れるものなのでしょうか。
2.マグロの酸味は、鮮度が高いほど強くて、日数が経つほど薄れる(もしくは甘みに変わる)ものなのでしょうか。

前者については、魚体が大きくなれば脂が乗ってくるので、脂の甘味で酸味が抑えられるという理屈が成り立つのかもしれませんが、よくわかりません。
どなたかお分かりになるかたがいらっしゃったら教えていただけないものでしょうか。
琵琶湖オオナマズ 2006.11.19 マグロの専門家じゃないので、お答えというより、経験上の話しです。
ボクの記憶では、トロの部分で、青く変色し始めると酸味が出てきていたような、、、、違ったかな?
マグロの専門家の方、マグロを扱っておられる方、教えて頂けますか。
加藤 2006.11.21 ご質問の件、マグロ屋に聞いてみました。

> 1.マグロの酸味といのは、メジほど強くて魚体が大きくなると酸味が薄れる
>   ものなのでしょうか。

マグロの酸味、脂の乗り具合は、生・冷凍/天然・畜養を問わず、基本的に魚体の大小に関係があります。
小さければ色が薄く、脂や酸味も少なく、魚体が大きければその逆となります。
しかし、漁場・季節、または畜養でしたら生産者独自の育て方もあり、味・身質・脂乗り具合など多種多様です。

> 2.マグロの酸味は、鮮度が高いほど強くて、日数が経つほど薄れる
>   (もしくは甘みに変わる)ものなのでしょうか。

マグロの酸味は、「鮮度」という尺度に立って言えばあまり関係無く、天然か畜養かにかかわらず、漁獲直前まで食べていた餌によるところが多いです。
下田@東京町屋 2006.11.21 琵琶湖オオナマズさん、加藤さん、ありがとうございます。
たいへん、参考になります。

琵琶湖オオナマズさん
> ボクの記憶では、トロの部分で、青く変色し始めると酸味が出てきていたような、、、、
> 違ったかな?

鮮度が落ちて青く変色するときも酸味がでるようですが、それとは別にマグロ固有の酸味というのがあるらしいです。

加藤さん
> 小さければ色が薄く、脂や酸味も少なく、魚体が大きければその逆となります。
なるほど、そうなんですね。
でも、メジは独特の酸味があるという人もいますし、やはり、いろいろ食べてみないとわからない気がします。

マグロ食べ比べ会、などをだれか企画してくれるとありがたいですね。
(他力本願ですみません)^^;
琵琶湖オオナマズ 2006.11.22 下田@東京町屋さんが閉められたのに、蒸し返して申し訳ないのですが、質問させて下さい。

> 小さければ色が薄く、脂や酸味も少なく、魚体が大きければその逆となります。
たしかにそうですね、
キハダにしてもヨコワにしても、小さいのは色がうすいですもんね。
ヨコワの脂乗りは、小さくてもいい乗りをしてるのもあり、様々という感じがしますけどね。

> マグロの酸味は、「鮮度」という尺度に立って言えばあまり関係無く、天
> 然か畜養かにかかわらず、漁獲直前まで食べていた餌によるところが多いです。

餌によって影響されるというのは、納得できます。
2001年5月、紀州オフ会のオプションで、近畿大学クロマグロ養殖場を見学しました。
 http://www.fishml.com/maguroyousyoku.htm

この時、餌やりも見せてもらったのですが、冷凍のスルメイカの内臓をぬいて、そこにサバをつっこんだものでした。
クロマグロはイカが好物らしく、イカを食べさすとサバには見向きもしないので、そういう形にしてやっているということでした。
(今もこのような餌をやっておられるのかどうかはわかりません。)
この餌の場合、酸味はどうなんでしょうね。
具体的に、この餌なら酸味が出やすいとかはわかっているのでしょうか?
この点、もし分かるようでしたら、教えて頂ければ有り難いです。
MANA 2006.11.22 マグロの渋みのお話について昔から疑問に思っていたことなのですが、蓄肉(と天然捕獲した野獣肉)をふくめて、赤味肉にはなんとなく渋みに似た感覚を覚えることは確かにあります。
でも、このシブミについて、自分が、マグロを食べたいという、食欲を生んだり、ウマさの評価のなかに含めて考えたことがあまりありません。
マグロの仲卸のひとが「シブミ」を口にするとき、あまりに、しぶすぎる味覚の表現で、ついていけないなあと考えてしまいます。
魚好き人間として、シブサを極めようというな気が起きたこともないのです。
このシブミについて 《マグロの酸味は、「鮮度」という尺度に立って言えばあまり関係無く、》というのも、考えればあたりまえで、鮮度の良い肉質は、シブミとか脂とかほとんど意識することなく、うまいと感じるし、鮮度の悪いドリップもでちゃった肉質は、たいがいにシブミ以前にまずい。
ぼくには、マグロのシブミ論の行き着く先が、何をいかそうとしてのものなのか、あんまりよくわからない。こういう門外漢の感想もありでしょうか。
琵琶湖オオナマズ 2006.11.22 「シブミ」と「酸味」は違うんじゃないですか。
実際、鮪の脂身を食べて、「あれ、ちょっと酸っぱいなー」と思うことはあるし、あれは、「シブミ」とは違うように思います。

> ぼくには、マグロのシブミ論の行き着く先が、何をいかそうとしてのものなのか、あ
> んまりよくわからない。

なぜ、酸味がでるのか、原因をしりたいだけです。
それがはっきりするば、酸味を出さないように養殖できるかもしれないでしょ。

> こういう門外漢の感想もありでしょうか。
いろんな立場の方の投稿で、このMLは成立しているのですから、もちろんありですよ。
heita 2006.11.22 鮪の話に加わりたいと思っているのですが、バタバタしていてなかなか時間がとれないのですが、少しだけ。

 味覚というのは、甘味、酸味、塩味、苦み、うま味の5種が基本味ですが、これに辛味と渋味が加わるのが普通です。しかし人は、歯触り、咀嚼音、臭い、見た目(色彩)等の感覚的な要素も総合して「味」と表現します。
 「美味しい」と言う場合は、上記の「味」に各個人の「好み」が大きく関わるので、一概に定義するのは無理です。

 さて、今回はその中の一つ、酸っぱいと言う酸味についてです。
 生きているときは、細胞内でグリコーゲンを分解してエネルギーを取り出し、その結果生成されるピルビン酸と乳酸を再生している。
 このため筋肉のphは7.2〜7.4のほぼ中性です。死亡することにより酸素の補給が絶たれると乳酸が蓄積しますが、このときphの最高値は5.6〜5.8に達すると言われています。
 この後、乳酸は分解され酸味が低下します。また、これと同時に「熟成」が進み。うま味成分であるアミノ酸等が生成されます。
 この兼ね合いというか、食べるタイミングによって、同じ魚でも味は異なります。

 なお、乳酸というのはいわゆる疲労物質ですから、疲れているときは多くなります。
 漁獲時に暴れまくっている魚を無理矢理洗浄に引き揚げて即殺(〆る)と乳酸がたまったまま分解されにくくなりますので、鮮度が良くても酸味があります。
焼津の大橋 2006.11.22 以前の「本鮪の酸味」のお話の時、血の酸味のレスを書きましたが。
確かに、本メジなんかは、色は薄いけど酸味がある。
ヒラソーダも、身色は薄いのに酸味がある。
新しいものに酸味がある。
酸味の起因には乳酸があって…と、その後かつおの酸味を調べつつ、得た知見含めてレス入れようと思ったら、heitaさんのもっとよりわかりやすいレスが入ってました。
私の解り難い説明よりも、断然解りやすいので二重に書くのは控えます。
MANA 2006.11.22 酸味と乳酸と熟成とアミノ酸と鮮度とウマミとがでてくて、私の頓珍漢な質問も自分の頭で何とか整理ができました。
同じ種類で生鮮品と解凍品との味の差も、そんなことなどもきっと影響してくるのでしょうね。
うん、おもしろくなりました。いろんな表現があるんだなあ。
アイッパラといったかなあ、スマを船上で釣れたてを食べた時の、あの「血」の色とうまさも、酸味とかんけいあるのなかあ。
ふとあの味をどう表現したらよいのかと思い悩んだことを思い出しました。
焼津の大橋 2006.11.22 ちょっと話が離れますが…スマで思い出しました。
知人が、スマとハガツオは釣ったところによって全然味が違うと話していました。
同じ場所で違うと言う事ではなく、トカラで釣ったらトカラの味、八丈で釣ったら八丈の、オーストラリア(南部)であればそこの味がするのだそうです。
色々な海域、水温や国、食すタイミングにもよるのでしょうけど、一種の魚でも色々あるのでしょうね。
キハダマグロやカツオに関しては、「えびっくい」(オキアミ・アミ・エビ系主食)と他のものは明らかに身色も味も違います。
本鮪も「サンマ食い」と「イカ食い」では味が違うようですから、1魚種でも色々な差があるのかと思います。
加藤 2006.11.22 > 鮮度が落ちて青く変色するときも酸味がでるようですが、
> それとは別にマグロ固有の酸味というのがあるらしいです。

友人のマグロ屋に聞きました。
「酸味という観点から見れば、『魚体の大小』『生息海域』『水温』など、多岐にわたり、一口では申せません。また、『魚群』があり、その群れ毎に差もあります。
専門的になりますので海域名は申せませんが、魚体の大きさ、色、御質、脂の乗り具合など、どこの漁場で水揚げされたか、また、何月何日かなどで、ある程度の予測が出来ます。
餌についてですが、天然・畜養を問わず、マグロ類はイカなどの甲殻類を好みます。
これを沢山食べた個体ほど品質が良く、畜養物は利益分岐点が餌を中心としたコストに関わるので、コスト削減をするため、安い『冷凍サバ』を与えれば味は酸味が強く、養殖ハマチと同じような味になります。
『生サバ』を与えれば、コスト高だが、かなり良い味となります。
出荷の少し前から、餌を『生イカ』に変えると、色、身質とも最高となります。」
琵琶湖オオナマズ 2006.11.22 ちょっと鮪からずれますけど、、、、、教えて下さい。

>  なお、乳酸というのはいわゆる疲労物質ですから、疲れているときは多くなり
> ます。漁獲時に暴れまくっている魚を無理矢理船上に引き揚げて即殺(〆る)と
> 乳酸がたまったまま分解されにくくなりますので、鮮度が良くても酸味があります。

この現象は、鮪に限ったことではないのですよね。
その点がどうかと言うことが一点目。
この↑質問の回答が、yesの場合、養殖のブリや鯛などは、池からあげてすぐに絞めますよね。あれでは、乳酸は増えないのですか?
活鯛や活ハマチ・ぶりなどが、酸っぱいというのは、聞いたことがないし、私も感じたことがありません。
琵琶湖オオナマズ 2006.11.23 乳酸説と環境&餌説があるんですが、この面では素人な私などは、どう捉えればいいのか、ちょっと悩み中です。(^_^;)
heita 2006.11.27 >>  なお、乳酸というのはいわゆる疲労物質ですから、疲れているときは多くなり
>> ます。漁獲時に暴れまくっている魚を無理矢理船上に引き揚げて即殺(〆る)と
>> 乳酸がたまったまま分解されにくくなりますので、鮮度が良くても酸味があります。

 鮪類のような赤身魚は、赤色の色素成分であるヘモグロビン及びミオグロビンがマダイ等の白身魚に比べ多く含まれます。この両方の合計をへムタンパク質と言いますが、その筋肉100g中の合計値は、マダイで6mg、クロマグロで500mg前後と桁違いです。
これは人間の赤血球にあたりますので、赤身魚は全筋肉中でグリコーゲンを分解してエネルギーを生成して豊富な運動量を得ると共に、大量の酸素を供給して疲労を回復しています。つまり、生成される乳酸も桁違いに多くなるのです。
 しかも。大型魚になると数十分から数時間も激しく抵抗して漁獲されます。その間に蓄積される疲労物質は、例えれば鉄人レース後の疲労困憊状態であり、小型魚のそれは100m競争後の一時的な疲労と言えるかもしれません。

>> この↑質問の回答が、yesの場合、養殖のブリや鯛などは、池からあげてすぐに
>> 絞めますよね。あれでは、乳酸は増えないのですか?

 ブリは赤身魚ですが、見てお分かりのとおり鮪ほど赤くはなく、ヘムタンパク質も筋肉100g中に20mg前後です。しかもいけすの中の養殖魚ですから、現代っ子と同じように成人病状態で体力はなく、ヘムも天然魚に比べて少ないでしょうね。

 また、無酸素状態(正確には嫌気的な条件で)で乳酸が生成される解糖反応は、温度が高いほど進行すると言われています。鮪類は、激しく抵抗することにより体温が急激に上昇し30から40度を超えるとされ、肉厚が厚いことから冷却には時間を要します。この点も大きな差だと思われます。

 なお、蛇足ですが、数十年前の講義のうろ覚えを基に皆さんにお話しするわけもいかず、参考書で確認しながらの投稿です。専門家ではありませんので、この点はご理解ください。
 今回参考にしているのは「マグロの生産から消費まで」 (小野征一郎編著 成山堂書店)です。魚ごとの特性、漁獲方法、生物科学、加工保存等マグロに関する全てが網羅されています。ただ、本体価格4千円と高価です。興味がある方は図書館などでご一読されることをおすすめします。
宮古島のカニ 2006.11.27 今月はパヤオ(浮魚礁)でのマグロ漁への同行が何度かあり、へろへろです。(^^;)
真夏ではありませんが、各船のいわゆる「ヤケ」対策の現状を見ています。

> 大型魚になると数十分から数時間も激しく抵抗して漁獲されます。その間に蓄積さ
> れる疲労物質は、例えれば鉄人レース後の疲労困憊状態であり、小型魚のそれは
> 100m競争後の一時的な疲労と言えるかもしれません。

ヤケの要因が「筋肉の高温」、「低pH(酸性)」と考えられていて、疲労物質、乳酸の影響ということらしいです。
恥ずかしながら、私はヤケたマグロの身を食べたことがないのですが、水産試験場は「水っぽく、バサバサした感じ」と表現し、一部の漁業者は「酸っぱい」と表現しています。
heita 2006.12.01 夏日になったかと思ったら、急に冷え込んだり、海水温分布も平年と異なっていたり、漁師の皆さんは漁場を探して右往左往しています。
11月に解禁になったソデイカ漁は、例年に比べツボ抜き7kg以上の大型が多いような気がします。浜値も値崩れの危惧に反して、今のところ好値を維持しています。ビンナガ市場価格の乱高下が気になるheitaです。

>真夏ではありませんが、各船のいわゆる「ヤケ」対策の現状を見ています。ヤケの要因が「筋肉の高温」、「低pH(酸性)」と考えられていて、疲労物質、乳酸の影響ということらしいです。
マグロ類のヤケは重要な問題だと思います。最近TVで有名な大間の本マグロにも結構ヤケがあると、築地の仲買人が書いた本に出ていました。

 先日、モズク栽培で有名な久米島漁協所属の海人(ウミンチュ)T氏と話をする機会がありました。T氏はパヤオでのキハダ釣りにも熱心に取り組み様々な試行錯誤を重ね、漁法の研究をしています。彼の話の概要は次のとおりでした。
1 パヤオの周りには40kg以上の大型キハダも目視できるが、通常の仕掛けには食いつかない。
2 テグスは通常80号前後を使用するが、25号に変えたら大型も食いついた。
3 手釣りで25号ではすぐに切られるので釣竿と電動リールを導入して2時間かけて釣り上げる。
4 こうして釣り上げたキハダにはヤケが見られない。
5 ヤケがないのでセリ値が高くなり、一日4本が限度だが、小型のものを沢山釣るより収入が多い。

 また、マグロは餌を丸呑みするので釣針もいったん胃袋まで行くが、胃袋に針がかかるともの凄く暴れるし、テグス部分が歯に当たるので切れやすくなる。そのため、胃袋からはスルッと抜けて口に掛かるように釣り針の形を円になるように改良しているそうです。

 延縄漁船のマグロにはほとんどヤケがないことが知られていますし、釣り針の形状も各種の物があり、T氏が言われる円上の形態の釣り針も大部以前から使われています。その点を話すとT氏も納得していたようでした。延縄を設置してから全て引き上げるまでに10時間から20時間かかりますから、釣り針に掛かってしまった魚は、暴れまくって疲れ果てた後、呼吸を継続することで筋肉に酸素を供給して乳酸を減らし(体力が回復し)、しかも、深海の低水温で血液が冷却されると考えられます。
 つまり、無理矢理引き上げて活き締めするよりも、瀕死の状態で生かしたままの方が身質が良くなるということですね。
 これは、自動車のラジエターに例えられると思います。ヒートアップしたエンジン(筋肉)に対しては、エンジンを止めるより、アイドリング(最低限生存)状態で冷却水(血液)を送り続けた方が早く回復します。しかも気温の高い夏(海面)より冬(深海)の方が効果は高い、ということです。 

 こういう研究熱心な漁師さんは各地にいるはずなので、有効な技を習って口べたな?あまり話そうとしない漁師さんに代わって、他の漁師さんに普及させていくのが水産業普及員の仕事だと思ったりしますが、どうでしょう??
宮古島のカニ 2006.12.01 >  こういう研究熱心な漁師さんは各地にいるはずなので、有効な技を
> 習って口べたな?あまり話そうとしない漁師さんに代わって、他の漁師さ
> んに普及させていくのが水産業普及員の仕事だと思ったりしますが、

それは、仰せの通りだと思います。
マグロ釣りについては、漁業者各々が工夫している細かな仕掛けなどは「他の人には言わないで」と言われることもありますが、大まかな操業形態などについては、情報交換や、地域間の技術交流(先進地視察等)は随時行っています。

実は今年の春、件の久米島のT氏同様、モズクとパヤオ(浮魚礁)漁業を営む宮古島の漁業者と共に久米島に行き、まさにそのT氏のモズク養殖現場を見せていただきました。その際、大型マグロを狙うために細い釣り糸を使い、時間をかけて釣り上げるというお話も聴いております。

パヤオの普及と共に、効率的なマグロ釣りが可能になりました。
それでも漁場は離岸20海里前後であるのが普通ですが、久米島では、黒潮本流に少し近いこともあり、島の周囲の、他と比べて近いパヤオが好漁場となっています。
同行した当地の漁業者は、その久米島と同じように40kg以上のマグロだけを狙うのは、諸条件を考えても、なかなか厳しいものがある、とおっしゃっていました。(もちろん、彼が実行してみた上での意見ではありません)
白浪@舞鶴 2006.12.03 ちょっと疑問があったモンで...m(_ _)m

>  延縄漁船のマグロにはほとんどヤケがないことが知られていますし、釣り針の形状も各種の物があり、T氏が言われる円上の形態の釣り針も大部以前から使われています。その点を話すとT氏も納得していたようでした。延縄を設置してから全て引き上げるまでに10時間から20時間かかりますから、釣り針に掛かってしまった魚は、暴れまくって疲れ果てた後、呼吸を継続することで筋肉に酸素を供給して乳酸を減らし(体力が回復し)、しかも、深海の低水温で血液が冷却されると考えられます。
>  つまり、無理矢理引き上げて活き締めするよりも、瀕死の状態で生かしたままの方が身質が良くなるということですね。

そうなのかなぁ...
マグロ延縄って何kmもある幹縄に何十mもある枝縄が付いてて,その先端に針が付いてるんですよね.で,幹縄自体は浮遊している.
つまり,針掛かりしても強烈な合わせが来るわけで無し,巻き上げられることもないこういう系に釣られた魚って,かなり自由がきくんで釣られたって自覚(?)が無いのでは.なんかおかしいなぁと思いながら枝縄の半径+αで泳ぎ続けてる..ストレスはあまり感じないので暴れないし乳酸も増えないのではと思うのですが,どんなもんでしょう
琵琶湖オオナマズ 2006.12.03 私もちょっと疑問が、、、、、
最初のテーマの「酸味」(食べてすっぱさを感じる)から、「ヤケ」に話しが変わってきているのですが、「ヤケ」が酸味を生み出すのですか?
「ヤケ」というのは、乳酸の発生の現象ですか?
heita 2006.12.04 > それは、仰せの通りだと思います。マグロ釣りについては、漁業者各々
> が工夫している細かな仕掛けなどは「他の人には言わないで」と言われ
> ることもありますが、大まかな操業形態などについては、情報交換や、
> 地域間の技術交流(先進地視察等)は随時行っています。

 細かな点は企業秘密で当然だと思います。
漁師さんと話しているときに、どんどん突っ込んでいくと、かなりの頻度で「これ以上は教えられない。」と、かわされてしまいますね。

> 実は今年の春、件の久米島のT氏同様、モズクとパヤオ(浮魚礁)漁業
> を営む宮古島の漁業者と共に久米島に行き、まさにそのT氏のモズク養
> 殖現場を見せていただきました。その際、大型マグロを狙うために細い
> 釣り糸を使い、時間をかけて釣り上げるというお話も聴いております。
>
> パヤオの普及と共に、効率的なマグロ釣りが可能になりました。それで
> も漁場は離岸20海里前後であるのが普通ですが、久米島では、黒潮本流
> に少し近いこともあり、島の周囲の、他と比べて近いパヤオが好漁場と
> なっています。同行した当地の漁業者は、その久米島と同じように40kg
> 以上のマグロだけを狙うのは、諸条件を考えても、なかなか厳しいもの
> がある、とおっしゃっていました。(もちろん、彼が実行してみた上で
> の意見ではありません)

 なるほどね。何でも聞いてみないと判らないものですね。でも、10kgに満たないようなマグロ類の幼魚を沢山釣っても浜値は150円/kg程度でしょ? 50匹獲ったとして500kgで75千円。50kgの良質キハダは那覇の卸売市場でも1500円/kgは期待できますから1匹で75千円。2匹で15万円。
細い仕掛けには当然小型魚も食いつくでしょうから、その期待もできます。
 もっとも、宮古島では大型魚は処分に困るかもしれませんね。
本土や沖縄本島に送るとしても運賃が馬鹿にならないですよね。「言うは易く、行い難し」ですが、チャレンジを続けるしかないですね。
heita 2006.12.04 > マグロ延縄って何kmもある幹縄に何十mもある枝縄が付いてて,その先端に針が
> 付いてるんですよね.で,幹縄自体は浮遊している.>
> 針掛かりしても強烈な合わせが来るわけで無し,巻き上げられることもない
> こういう系に釣られた魚って,かなり自由がきくんで釣られたって自覚(?)が
> 無いのでは.なんかおかしいなぁと思いながら枝縄の半径+αで泳ぎ続けて
> る..ストレスはあまり感じないので暴れないし乳酸も増えないのではと思うの
> ですが,どんなもんでしょう?

 私のいる港では、漁船の型で10から19トン型の冷蔵マグロ漁船が主体で、幹縄が60km前後、50m毎に800から1500個の釣り針が付いていて枝縄が25mです。幹縄の所々にはアバと呼ばれる浮子(昔ビン玉、今はプラスチック玉)や錘を付けて深度を調整します。
 
 さて、大変おおざっぱに言うと、マグロは通常の遊泳速度30km/時、索餌時80km/時、逃避時の瞬間速度160km/時に達すると言われています。また、マグロ類はある程度の早さで泳ぐことで海水を口から取り込むことにより呼吸していますから、低速で泳ぐと窒息=溺れてしまいます。
 時速80kmで泳いでいる魚が25mの枝縄なんて一瞬で引っ張りきりますし、その力で張り掛かりします。しかも海中で抵抗物(延縄)を引っ張るのは相当な力を要します。これは十分にストレスになると思います。50kgを超える魚になると、周辺の枝縄や幹縄を巻き込んで暴れ回り、数km分の漁具をメタクチャな団子状態にして漁師を困らすこともあります。

 実は、延縄で水揚されるマグロのうち、半分以上が死んだ状態で海からあがってきます。これは、張り掛かりした後暴れまくったあげく、呼吸をまかなうほどの遊泳することができなくなり、溺れ死んだのではないかと、私は思っています。死んで揚がった魚は身質も良くないものが多いのです。
heita 2006.12.04 > 「ヤケ」というのは、乳酸の発生の現象ですか?
 酸味の呈示成分は色々ありますが、その主体が乳酸の増加に伴うphの低下だと考えています。筋肉中に酸化物質が増えることにより「酸っぱく」なると思います。
 この乳酸と高温等の他の条件が重なるとヤケが発生するのではないかとの推論がありますが、乳酸=ヤケ、と言うことではありません。ヤケの科学的根拠はまだ解明されていませんので、推測の域を出ません。

 なお、本マグロは高価のため、大間のマグロを初め釣り上げたら直ぐに帰港します。
延縄漁船でも、通常は5から10回の操業で7日から15日ほどの航海ですが、本マグロが釣れると途中で打ち切って帰港します。このため、鮮度は良いのですが、熟成する時間がありませんので酸味を感じることが多くあります。
 熟成については諸説ありますが、大型マグロ類を冷蔵する場合7日程度と言われています。牛肉でもそれくらいですよね?ですから、沿岸や近海で2週間程度操業する小型延縄漁船のマグロが適当ではないでしょうか?
 遠洋漁業の大型延縄の場合は、船上で急速凍結してしまいますので、凍結されている間は熟成も止まってしまうと考えられます。解凍後は急速に解糖反応が起こりますので、日持ちが悪くなるようです。
 日本で消費されるマグロ類50万トンのうち生鮮マグロは5万トン程度ですから、流通しているほとんどは冷凍物です。この機会に皆さんも生鮮マグロを探して味わってみてくださいね。特に、沖縄産なんか美味しいと思いますので、宜しくお願いします。
白浪@舞鶴 2006.12.04 >  実は、延縄で水揚されるマグロのうち、半分以上が死んだ状態で海からあがっ
> てきます。これは、張り掛かりした後暴れまくったあげく、呼吸をまかなうほど
> の遊泳することができなくなり、溺れ死んだのではないかと、私は思っていま
> す。死んで揚がった魚は身質も良くないものが多いのです。

そんなに死んでるんですか.
σ(^ ^;が普段目にするのはマダイとかハタを狙う底延縄で,どの魚もピンピンして揚がってくるモノで,マグロ延縄もそうだとばかり.それではヤケが起こっても不思議ではないですねぇ.
というか,漁具自体を改良して,なるべく活かして漁獲できるようにすれば水揚げ金額もアップ,資源にも優しいってことになりそうですね.
たとえば,枝縄の間隔を広くする.枝縄を長くする.アバを浮力の大きなモノを一つではなく,小さなモノを数珠繋ぎにする...
ホントは幹縄を半分くらいの長さにするのが一番良いのでしょうが.
60kmもあると10ノットで3時間余り.投縄に4時間,船を回すのに2時間,揚げ縄に6時間でも半日もかかる.これではダメでしょうね.
とはいっても幹縄を短くするのは空振りの危険性も増すし...
でも,最小の努力で最大の水揚げを得る最適解がどこかにありそう(^O^)





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