有機養殖について

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福山 2002.10.22 今日はみなさんに質問がしたくて投稿しました。
 最近、養殖業界では極力、抗生物質などの薬に頼らず、安全な養殖魚を育てようとする動きが見られます。
 私自体も無投薬で養殖をおこなっています。
 そこで魚に対する知識が豊富で、消費者の方もたくさんいるこのメーリングリストで、是非話を聞いてみたくなりました。
 「有機養殖」についてみなさんが考えておられる概念や率直なご意見や感想を聞かせていただけないでしょうか?
波平 2002.10.22 ところで、福山さん、錦江湾と言っても広うござんす。
どのあたりで、何を養殖なさっておられますか? 錦江湾はある種閉鎖海域。気になります。
琵琶湖オオナマズ 2002.10.22 >  「有機養殖」についてみなさんが考えておられる概念や率直なご意見や感想を聞か
> せていただけないでしょうか?
「有機養殖」という言葉自体、一般消費者には理解しづらいのではないでしょうか。
農業なら、無農薬・減農薬とか、有機野菜とか、いろいろそういう言葉を聞きますし、一定の位置づけもされてきていますが、水産界では位置づけ自体あいまいではないのですか。
福山さんが問われている「有機養殖」というものの中身を、少し説明していただけるとありがたいですね。
福山 2002.10.22 > 福山さんが問われている「有機養殖」というものの中身を、少し説明していただけ るとありがたいですね。
 水産物で有機認証を受けているのは、私が知る限り山田水産の養鰻だけです。
 多分、海ではまだないのです。
 つまり基準作りもこれからもしくは作成中ということになると思います。
 そこでみなさんに「有機」という言葉の感じるままのイメージをお聞きしてるのです。
私がはじめに話してしまうとみなさんのイメージに影響を与えるかもしれないので、みなさんの考えるままの意見を聞きたいのです。
 「有機養殖」でも「有機水産物」どちらのイメージでもかまいません。
 その後の議論の中で、私なりの考えをまた話していきたいと思います。
天草の松本 2002.10.23 fish3649に下記のような記事をご紹介しました。
9月20日、10月21日と2回会合に出席してきました。
顔ぶれはオーガニック認証協会の人たち、食品衛生のコンサルタント、水質検査会社関係者、魚類養殖業者、水産用医薬品販売関係者、養殖飼料会社、魚市場、一部報道関係者などの方々でした。
まず、思ったのは、生協関係者や消費者団体などが参加していないこと、有機養殖水産物(自主)基準の策定を年内に作り上げようとしており、議論の時間が短すぎること、でした。
基本的にはIFOAM(国際有機農業運動連合)という国際的な有機生産の基準にのっとって自主基準を策定する、という説明でしたが、現時点では消費者参加がないこともあって、生産者の現況を聞きながら(例えばイケスの配置、立地条件や距離など)基準策定の参考にするという風に進んでいます。
消費者がおそらく一番不安に思っている、薬品投与については議題は次回以降となりますが、すでに抗生物質などの休薬期間が慣行の2倍以上とするなどの話が出てきたりしています。

私の理解では、農産物では今は[有機]といえば以前のように[有機低農薬]というのはありえないはずで、水産で[有機]として休薬期間を長く取るだけなら、消費者の方で混乱を生じるおそれが大きい、という意見を言いました。
慣行より少々投薬を少なくして[有機]というレッテルをはって付加価値をつけよう、という風にも取れます。
完全に無投薬でがんばっておられる福山養殖さんや鷲山さんの飼育する[有機]水産物との区別はどうなるんだ、という気持でした。
この会は放っておくと生産者ベースの方向に進みそうなので、次回は消費者団体の人たちに呼びかけ参加いただこうと思っています。
梅村 2002.10.23 農産物での有機栽培は当然「無農薬」「無化学肥料」なのですが、前提条件に「土づくり」がありますよね。
JAS法で言えば「農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学合成肥料及び農薬の使用を避ける事を基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境
への負荷ををできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産されること。」としてますよね。
同じく海の生産力の回復と言う観点から考えると有機養殖ってできるのでしょうか。
そのくみ、旧姓園@消費者 2002.10.23 >  「有機養殖」についてみなさんが考えておられる概念や率直なご意見や感想を聞かせていただけないでしょうか?
実は「有機養殖」という言葉をきいても全くピンときませんでした。
より安全な養殖魚、環境を大事にする養殖法ということを考えて、「有機養殖」という基準を作ろうというお考えなのでしょうが、もっと具体的に、例えばフグなら「福山養殖:ホルマリン不使用」と書いてあるほうがわかりやすいです。
養殖の実際についてはほとんど知りませんが、魚種によって養殖条件とか病気に対する抵抗力とか違うと思います。基準を決めるのは難しくないですか?
MANA 2002.10.24 有機養殖という言葉を見てどきリとしました。養殖に「有機」という形容詞をくっつけて、はじめて「有機養殖法」なる概念を提起した張本人は、僕なのです。
はじめて使った言葉なのかどうかはほかに探したことがないからわかりませんが、農業でもまだ有機農法作物が市場でチャンと評価をされていなかった15年前にたしかに、ほとんど造語のつもりで付けてエビ養殖のことを書いたときに使いました。
『エビ養殖読本』(藤本岩夫著・水産社・1989)という本のなかのあとがきの替わりに、「有機エビ養殖のすすめ」という項目を立てました。覚えておられる人もいるかもしれません。
僕がはじめて使ったかどうかなどはどうでもよいことです。

養殖の関係者が数多く参加されているMLで、門外漢の人間が口を挟むのはよそうと思ったのですが、オーガニックがこれだけもてはやされ、イイ商品を作ろうと頑張っておられる養殖生産者の存在をこのMLで知ったからこそ、昔のことをちょっと話そうと返信する気になりました。
まず結論は、「有機養殖」ということ自体は、「そのくみ」さんが、わかりズライ、「無投薬」のほうが安心感があって消費者に受け入れられやすい、という意見を書いていましたがその通りだと僕も思います。
松本さんの意見で、生産者ベースだけでオーガニックな養殖ものを考え過ぎるのは考えものということもその通り。あえて、ウケを狙った「有機養殖」という言葉を使う意味は現在はあまりないということかもしれません。
それと、僕の感じでは、「有機養殖」という言葉をもし使うとするなら、薬を使うとかつかわないとか、安全とか、そいう基準値をクリアする云々の問題ではなく、生産をおこなう「環境」とその環境でおこなう「方法」と、生産者の「スタンス」の問題としてなら使えるのかもしれません。
「環境」という意味においては、海水や内水の区割り養殖ではなく、粗放、集約といった人工的に作った内陸あるいは沿海地の「養殖池」の形態の中で、いかに自然のママに、しかも人間の手をどこにかけてあげれば、低レベルな生産力だけれども、完全原始的生産よりは、経営的にも成り立ち得るような効果的な結果を得る。というような意味における養殖ができる対象の魚は、甲殻類かサバヒーあるいはコイ科のようなものたちに限られるかもしれません。
そして、「方法」としては、水田との二毛作生産、あるいは水田の中で一緒に育てる(放置するという意味)形態(なんて言うのか?)のような養殖です。こんな、限定的に使う言葉として、「有機養殖」を使ったのです。日本の中で、おそらく、こう言う概念に当てはまる養殖は、「佐久ゴイ」(本物の)のようなものぐらいしか頭に浮かびません。あるいはほかにあれば、是非とも知りたいぐらいです。
それから「意識」あるいはテツガクと言い換えてもよいという点については、最近知ったのですが、「自然と遊ぶ」という概念をも含む「マイナーサブシステンス」(直訳すると「マイナーな暮らし」とか「伝統的小規模生産実態」とでもいおうか。まあ、木こりさんとか、焼き畑とか海草拾いとかでしょうか??)との接点で、今後注目される(かもしれない)ジャンルとのつながりがでてきます。

僕が、有機養殖という言葉を使ったのは、15年前ほどです。
水産週報という雑誌に、エビ養殖のテクニカルノートのようなものを載せたことがきっかけでした。そのきっかけとなったのは、藤本岩夫という、冬なのにアロハシャツのようなシャツを着たおかしな男が、僕のところに原稿を書いてきたので見てくれないかと、突然に現われたときから始まりました。
藤本岩夫さんは、あの藤永元作のもとで学んだ最後の弟子(彼はそう言っています)でもあったのですが、国内でのくるまえび養殖に早くから見切りをつけて、フィリッピンで一人で養殖池を耕してエビ養殖をはじめたのです。
日本で連作障害で失敗した藤本さんが考えたのは、より強いエビをつくればよい、ということでした。
東南アジアやインドで粗放養殖の現場でエビ養殖を実践してきた彼は、2つの点に着目しました。1点は、池干しをするときに土を放置状態ではなく、さらにいい土壌にできないかということ。2点目は、自然に繁茂する「藻」、時には雑草として稲栽培には邪魔になるそういう水中植物です。
1番目の土について、かれは、いろいろな実験の中で、人糞を加えて見たらどうか、ということもやり、けっこういい成果を上げたそうです。いわゆる、石灰の散布ような土壌改良手法をどうするかということです。2番目は、残留した藻が土に返リ、また生えてくるときの、藻自体の餌としての効果と、プランクトン発生との因果関係の観察でした。
こうした実験と観察結果を、原稿にして書いてきたのですが、専門家の間では、フジモトがまた変なことをヤっているぐらいしか思われずほとんど無視されたそうです。
僕は、とても面白いと思い、先述した雑誌に連載をして、それをもとに本にしたのです。
僕は、粗放養殖で得た経験を生かした池づくりと管理の手法を「フジモト・メソッド」として、当時、台湾のBT(ブラックタイガー)全滅や大商社資本を背景とした大型養殖プロジェクトのアンチテーゼとして、そして少しは既存の養殖の中に生かせないかという意味を込めて、この本の終章を「有機エビ養殖のすすめ」として、「どん底からつかんだ養殖の基本」「強いエビを作るための方策」「大型養殖プロジェクトへの提言」の三つに整理してみたわけです。
彼は、フジモトメソッドを引っさげ、そのごインドのBT養殖勃興に大きな貢献をした(と僕は思っている)のです。彼は、エクステンシブ(粗放)と、インテンシブ(集約)の中間型のセミインテンシブのエクステンシブに近いものを指向したのですが、インド人資本のプロジェクト好きで、ドンドン大型になっていくかたちのなかで、結果として、フジモトメソッドのいいところが消えて、最後は、病気発生で、失敗しました。
僕自身も3回ほどインド東部から南部の開発地をくまなく歩いて、フジモトメソッドの形骸化した姿と、一方で水田養殖地の元気な姿もこの目でつぶさに見てきました。
フジモトメソッドの本質を彼自身も見失ったなどと、僕にそんな結果を「原因」などという判決を下せる資格などありません。実践者のみが自身で評価を下して、次なる実験にとりかかってほしいのです。
藤本さんとは、この2年連絡がとれていません。だれか、もしごぞんじのかたが居られたら御一報お願いします。
長くなってすみません。こういうものは、僕のホームページにアップしてリンクさせればいいのですが、ぼくも書きながら思い出しつつ書いているので御容赦下さい。

あと1点だけ、書かせてください。フジモトメソッドに着目してくれて、イクステンシブ(粗放)のままやろうとしたのが、生活クラブ生協連のオルター・トレード・ジャパンのかたたちでした。
インドネシアのエビ養殖家(いわば篤養家とでもいう)とタイアップして健康で旨いエビを日本に持ちこみました。それが、現在でも生活クラブ生協の「ブラックタイガー・エコシュリンプ」です。
「そのくみ」さんが言われるように、有機など名前をつけないでも、商品紹介では「ブラックタイガーL=インドネシア産。養殖池に発生するプランクトンやイトミミズを餌に、薬剤を使用しない粗放養殖」(女房の机のところにあった生活クラブ連合のLIVELY最新号より)と、商品紹介があるだけで消費者はウソがないか判断してわかるのです。
消費者にとって「イトミミズ」や、「粗放養殖」など聞きなれない言葉が、かえって、インドネシアの自然環境と安全性や、生産者の生産意欲や、商品開発者の開発意図が浮き掘りにされるものです。
オルタートレードでこの商品を開発した足跡をしるした『有機エビの旅』(村井吉敬・堀田正彦ほか7人の共著・オルタートレードブックレット・1994)にその経緯が記されています。
波平 2002.10.24 有機養殖と聞いて、まず思い浮かんだのはサバヒーのことでした。
なにせ、池を乾かせて人糞撒いたりするらしいから。詳しいことはいまいちわからんけれど…、
北海道大学図書刊行会の「稚魚の自然史」とか、恒星社厚生閣の「東南アジアの水産養殖」に、熊谷氏のサバヒーに関する論文が登載されていると伺っていますが、未だに未見のまま。
せっかく教えてもらっておきながら、申し訳ないことであります。熊谷さん、ごめんなさい。
今ひとつ、思い浮かぶのは、中国の池中養魚のこと。
中国淡水養魚経験総括委員会編「中国淡水魚類養殖学」が同名で翻訳出版されており、これに、書かれてあるのがまさに有機養殖のあれこれ。
わたし、素人趣味で読むのだけど、メッチャおもしろい。
この本あるを教わったのは、クリさんの、Fishml投稿からでした。
養魚経のことで、おたずねしたのがきっかけだった。
以後、本を探すのに手間取ったけど、滋賀県立図書館に上中下が揃っていました。
“有機養殖”、まやかしであってほしくないですねぇ〜。言葉がきつすぎたかな。
MANA 2002.10.24 僕も同感。意識的に有機、有機といっているひとは、とりまきとか、商売人が多くって(ぼくもその中に入るのかもしれないです)、チャンとやってる本人は、当たり前のことやっているんだからと、そんなこと言わないという場合も多いです。
ゴールド・マイニング(金鉱堀)のつもりでブラックタイガー養殖で一旗あげようというインテンシブ養殖業者を皮肉って、「おれのはゴールドったってコヤシ(人糞=GOLD)だから、ゴールド・プランティングだ」とミスターフジモトはいっていたのを思い出しました。
有機ってよく考えればもとはゴールドでした。
僕の生まれたうちは、まだ純和式のゴールドタイプのトイレでした。懐かしいなあ。
子供のころは、おやじが、庭の小さな野菜畑に何ヶ所かずつ穴掘って柄杓でくべていた姿が、実は、汚らしくて恥ずかしくって、友達にみられたらやだなあ、と思ったものでした。
この次の投稿から、話題が水産養殖用ワクチンに変わっていきますので、別のページにしました。
 水産養殖用ワクチンについて



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